企業・政府・NGOが迅速かつ効果的に連携-日本発の緊急人道支援のしくみ ジャパン・プラットフォーム

包括的な支援を迅速に届けるオールジャパンの連携体制

「JPFの存在によって、オールジャパンの支援が可能になったのです」と語るのは有馬JPF共同代表理事。1999年、コソボ難民への人道支援が世界中に求められていた中、日本のNGOの多くは単独で支援を行う財政基盤が十分になく、日本は迅速かつ効果的な支援のプレゼンスを示すことができなかった。この経験を教訓として生まれたのがJPFだ。国内外の緊急人道支援において、JPFは企業や政府と連携して効果的に支援金、物資、サービス、人材を集め、加盟NGOが一秒でも早く現地で活動できるよう助成する。

実際に現地で活動する加盟NGOが、経験、知識、実績を伴った信頼できる団体であることは必須だ。JPFには、加盟のための厳しい審査がある。さらに、各支援事業に対して、その妥当性、安全管理体制などを事務局、外務省、経済界、NGO、有識者等の代表が見極める厳しい審査を迅速に行うしくみがあり、最終的に承認された事業にのみ助成する。またJPF事務局のモニタリングによるフォローアップも怠らない。

現在45の加盟NGOがプログラムごとにワーキンググループを形成して情報共有し、各得意分野を生かしながらJPFとして包括的に支援展開できることも強みだ。
こうして2000年設立以来、40以上の国や地域で総額280億円以上による800以上の事業が実を結んでいる。

ジャパン・プラットフォームは、NGO、経済界、政府が稼働して、市民社会と共に、日本初の人道支援に取り組む団体です。

地元の方々と密接に連携東日本大震災におけるJPFの役割

JPFのしくみとスキルは、2011年の東日本大震災の際にも生かされた。地震発生2時間46分後には出動を決定し、当日夜には各加盟NGOが支援を開始するための初動資金が集まった。「大切な支援金を有効活用することはJPFの使命です」。企業や個人による寄付は総額70億円にのぼり、大規模な被災者支援活動の原動力となった。

2011年3月には、仙台市に事務所を開設。2011年5月には、加盟NGOの支援活動への助成に加え、地元NPOなどにも助成対象を広げた「共に生きる」ファンドを設立した。さらに、岩手、宮城、福島県の各地域連携・中間支援組織をサポートし、県・市町ごとに復興支援の情報集約や活動調整、NGOと行政機関との橋渡しができる体制整備に貢献してきた。

震災から3年を経た今、多くの企業はその専門性や得意分野を生かして、さらに貢献していきたいと考えているという。JPFは、地元の方々と密接に活動する中で得る、最新の被災地ニーズや課題等の情報を、そうした企業に提供することにも注力している。

現在JPFは2015年度までの支援計画を進めている。しっかりと課題を見据え、限られた予算でより戦略的に活動の成果を出していくため、その独自のしくみを活かし市民社会と連携していく。

有馬 利男 (ありま・としお)
2010年よりジャパン・プラットフォーム共同代表理事。2002年から富士ゼロックス代表取締役社長、2007年から相談役。国連グローバル・コンパクト・ボードメンバー、一般社団法人グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク代表理事、ほかキリンホールディングスなど数社の社外取締役を兼任。