ASEAN市場として脚光を浴びるミャンマー-人道支援による新たな可能性を広げる ジャパン・プラットフォーム

難民、国内避難民の人道支援で国内情勢の安定化に貢献

経済統合によって巨大市場となり、今後も成長が期待されるASEAN。ミャンマーの加盟は1997年だ。近年、急速に社会変革が進み、外国企業も将来性のある投資先としてミャンマーに目を向けるようになった。

しかし経済発展の妨げとなる要素も残る。ミャンマーには約7割を占めるビルマ族以外に多くの少数民族が暮らしてきた。1948年独立直後から国軍と少数民族武装組織の紛争が続き、多くの少数民族が生活の基盤を失った。現在、64万9000人が国内避難民となり、11万8917人が隣国タイの難民キャンプで暮らしている※1。

長期に及ぶ彼らの難民生活において、子供たちの教育、生活環境の整備、保健衛生の改善など、課題は山積みだ。発展には国内情勢の安定化が不可欠であり、そのためには人道的な難民支援がひとつの鍵となる。そのような状況下、事前の現地ニーズ調査を踏まえ、2013年3月、NGO活動に厳しい制限があった現地政府から正式に許可を得て、「ミャンマー少数民族帰還民支援」実施を決定したのが、国際緊急人道支援のプロフェッショナルであるJPFだ。

企業支援により、現地の無電化地域に明かりを灯す活動

失われた世代をつくらないために

JPFの「ミャンマー少数民族帰還民支援」は、2013年4月より3年計画で、タイ・ミャンマー両国において、紛争の影響を受けたカレン州への難民帰還支援を展開する。帰還に備えた生活環境や基礎インフラの整備、再定住準備等を目的としている。「現地政府などと連携し信頼関係を構築しながら、現地ニーズに合わせた支援のためにNGO、政府、企業を効果的につなげられるよう尽力しています。タイ側難民キャンプで長年支援活動をしてきたNGOなど、JPF加盟NGO10団体(2014年8月現在)が各得意分野で事業を実施しています」と倉橋氏は述べる。

例えばタイの難民キャンプでは、コミュニティー図書館事業を実施している。ビルマ語の本をそろえ、帰還後の語学や文化へのスムーズな対応のための環境を整えたり、掲示板を運営し、難民たちが主体的に意思決定できるようサポートしている。

一方ミャンマーでは、紛争の影響を受けた地域における子供の保護事業のほか、小学校建設や教育備品供給、給水施設整備、電化支援などを実施。今後見込まれる難民や国内避難民の帰還に向けた生活環境の整備を行っている。また、ミャンマーにおける企業とNGOの協働事例としては、新興国・途上国の無電化地域における社会課題の解決に貢献するためにソーラーランタンを寄贈するプロジェクトの一環として、ミャンマーで活動するNGOに累計で5,000台寄贈した企業もある※2。

将来を見据えた包括的な支援には、発足以来、総額310億円、980事業以上、40以上の国・地域で人道支援を展開してきた実績が生かされる。また、近年同国を含むアジアで頻発している水害の際には、毎年迅速な支援を行っている。「新興国市場として企業が注目するミャンマーですが、現地にいると、まず人道的な支援によって接点を持つのも一考の価値があるのではないかと感じます」と倉橋氏。経済発展に伴う労働環境を整えるうえで、個人や企業によるコミットメントに大きな期待が寄せられている。

※1:出典 OCHA, Myanmar Countrywide Displacement, Snapshot (November 2013),
   Resettlement of Myanmar Refugees from Temporary Shelters in Thailand, as of end of June 2014
※2:JPFプログラムではありません