15周年記念スペシャル座談会 JPF共同代表理事 2014年度 年次対談 15年間のパートナーシップで醸成
市民社会をつなげ、国内外に人道支援を届けるプラットフォーム 2014年度JPF年次報告書より

JPF理事 古賀信行×JPF共同代表理事 有馬利男
金田 晃一(かねだ こういち)
有馬 利男(ありま としお)
木山 啓子(きやま けいこ)エディ 操(えでぃ みさお)

ジャパン・プラットフォーム(JPF)理事、JPFの成長を厳しくあたたかく支えるアドバイザーが、
設立からの15年間を振り返り、今後の展望を語ります。
これからのJPFを一緒につくっていく、そんな関わり方が見えてくるかもしれません。

企業とNGOの信頼関係日本の緊急人道支援は15年間でどう変わったのか

有馬
有馬利男 2000年、世界の自然災害や紛争からの難民・避難民に対する緊急人道支援を、迅速かつより効率的に行うための新しいしくみとして誕生した、ジャパン・プラットフォーム(JPF)。設立以来、皆さまのご理解とご支援に支えられて、2015年8月で15周年を迎えることができました。平素よりご支援をいただいている多くの企業・個人の皆さまをはじめ、JPFを支えてくださっている皆様に心より感謝申し上げます。私は設立時に直接は関わっていないのですが、木山さんはNGOの現場を熟知されている立場から、金田さんには企業の目線からJPFを見守ってきていただいており、当初からのメンバーとして活躍されてきています。JPFができて、この15年間で何が変わったとお感じですか。
木山
当時、世界で緊急人道支援が必要とされているとき、日本の各NGOは単独で迅速に包括的な支援を行うだけの財政基盤やキャパシティが十分にはなく、国際支援の輪に入れなかった実情がありました。何かが起きると募金から開始して現地に入れるのは1ヵ月後という状態で、各NGOの悩みは初動のための資金でした。その課題を解決すべく、NGOから、経済界、政府とともにそのプラットフォームを作る構想が持ち上がりました。いかに早く現地入りして支援の場所を確保し、日本としてきちんとプレゼンスを示していくかということも重要でした。JPF設立以前は、日本が現地の支援団体のコーディネーションミーティングに出ると、日本の人もいるんだと驚かれる雰囲気でしたが、今では、国際社会の支援の一翼を担うべく国連機関との契約、資金を獲得する力、現地で支援分野ごとのミーティングをリードする力もついてきました。
有馬
迅速に現地入りして、支援を実施できる状態にいることが信頼されるポイントで、そのためには、ある程度の初動資金を常にプールしていることが非常に重要だったのですね。現在では、NGO、経済界、政府(外務省)、学識界、メディア、財団などがそれぞれの特性や資源を持ち寄って、日本の緊急人道支援の迅速かつ効果的な実施という目的に向かって連携していくしくみが機能しています。JPFのしくみ、現地情報、初動資金をもとに、発災の翌日には被災地に向かうことが可能になりました。こうして設立以来、40以上の国や地域で、総額350億円以上もの支援金による、1,100以上の事業が実を結んでいます。
金田
ちょうどJPF設立の動きがスタートした1999年、世界経済フォーラム(ダボス会議)において、当時のコフィー・アナン国連事務総長が、グローバル企業のCSR活動を促進する「国連グローバル・コンパクト(The United Nations GlobalCompact)」の必要性を提唱しました。日本企業はビジネスのグローバル化は進めていましたが、緊急人道支援などグローバルな課題に対してはなかなか身近に感じることができず、その新しい概念との関わり方を模索していました。そんな中、JPFのプラットフォーム構想が持ち上がりました。経団連から声がかかり、富士ゼロックスは事務局に対して人的支援をする、ソニーは映像機材を提供する、NECはウエブサイトの作成を手伝うなど、まずは数社が協力し、JPFの活動基盤を少しずつ強化していくこととなったのです。
木山
この15年間で企業、JPF/NGO、双方の関係は変わりましたか?
金田
金田晃一はい、どちらも大きく変わったと思います。まずは、NGO側の変化ですが、活動内容の開示だけでなく、支援金の活用実態についてしっかりとご説明いただけるようになりました。また、活動内容の深さにも変化が見られます。活動主体としてどのような支援をしたのかというアウトプット情報だけでなく、それによって対象地域やそこに住む被災した方々の生活環境がどう改善、安定してきたのかという成果、すなわちアウトカム情報、さらには、支援地域の現地政府がどのように触発され長期的に復興を支えてくれるようになったのか等、活動が引き金となって地域社会に対してどのような変化をもたらしたのかというインパクト情報についても具体的にご説明いただけるようになりました。次に、企業側の変化です。それまで、人道支援というと、社内の社会貢献部署が単独で頑張る、または寄付金のみの関わりで終わることが多かったのですが、NGO側の変化に伴い、人道支援には関係がないと思っていた社内の様々な部署との連携が始まりました。また、経団連の支援もあり、企業同士が集まって、NGOとの連携方法について学ぶなど、企業側も人道支援に対して、自社の強みを活かし、主体的に関わりたいと考えるようになりました。その結果、金銭寄付や製品寄贈の申し出だけではなく、人材、技術、ノウハウなど自分たちの持つアセットの棚卸しをし、イノベーティブな支援方法についてNGO側に提案する企業も出始めました。これは、信頼関係がないとできないことで、15年前とは格段の差です。企業はNGOからの活動報告を受け、「そこまできめの細かい活動をしているのか」という感動や、「社員のモチベーションや会社のレピュテーション面で、支援を通じたメリットもある」という気づきがあると、「まだ支援できることがあるのではないのか」「またもう一回」という気持ちになります。JPFは、中間支援組織として、NGOと企業の双方のよい変化を加速する役割を果たしていると感じます。
エディ
多くの企業は、JPFへの寄付を、経験、知識、実績を伴ったNGOに寄付するためのスクリーニング機能としても信頼してくださっていると思います。透明性確保のための評価システムは、JPF設立時に企業側から発案していたことの一つと聞いています。今では、各NGOの支援事業案に対して、「助成審査委員会」で関連の専門家と事務局がその経済性、実現性、安全管理体制などを評価し、さらに「常任委員会」において経済界、NGO、外務省、有識者等の代表が、総合的な見地から妥当性を見極め、最終的に承認された事業にのみ助成するという厳しい審査プロセスが機能していますね。事業が始まってからも、JPF事務局のモニタリング等でフォローアップしています。
木山
JPFは設立当初より活動の説明責任や透明性を重要視してきました。それにより企業や寄付者の方々との信頼関係を築き上げ、よいサイクルがまわってきていますよね。最初はJPF運営のためのリソースさえなかったですし、企業と何をすればよいのかも試行錯誤でした。マッチング寄付など想像もしなかったですし、企業から担当者が1人出向にきてくれるだけで嬉しかったのです。まさに今この場のように、企業とNGOがパートナーシップを前提に話ができるということそのものが、JPFがつくった大きな価値だと思います。

改めて見直し追求していくべきJPFの付加価値とは

有馬
説明責任の根底には、JPFの意図に基づいた成果が必要です。10周年を迎えた2010年に、JPFの次の10年を展望したレビューの機会を設けましたが、そこからあがってきたのは、JPFとしての付加価値の追求でした。例えば、2005年のパキスタン地震における避難民キャンプの運営では、初動資金をもとにした迅速な出動だけでは満足せず、現地で活動するNGOが協力しあい支援の相乗効果を出すという付加価値の創出を目指しました。他にも例えば、民間資金はどうでしょうか。初動資金は政府のODA資金を活かす新しい構造となりましたが、JPFを根本的に機能させるためには、企業が本業を活かしてNGOと協働できる機会創出はもちろん、継続的な賛助会員や、これから起こる災害のための支援基金として、平時から民間企業のご協力をいただけることが課題となっています。これまでは社会的責任に対する意識の強い企業のみがプラットフォームに参加していましたが、今後は企業社会全体として発想を大きく変えていく必要があり、そこにJPFとしてどのような付加価値を提案していけるのかが重要なのです。また、戦略的な支援プロセスについても、改善できる点が残っています。
木山
NGO間の協力に関しては、JPFの存在によって、各NGOがお互いのリソースを出し合うような連携が可能になりました。現在は、47のJPF加盟NGOがプログラムごとにワーキンググループを作って協力し、現地情報を共有したり、各得意分野をいかしながら、ともにより効果的な支援をしていこうという意識を持って活動しています。例えば「東日本大震災被災者支援」や「イラク・シリア難民・国内避難民支援」など長期的な支援について、加盟NGOとともに活動報告のためのシンポジウムを開催したり、「フィリピン台風ハグピート被災者支援2014」では、加盟NGOと合同の緊急初動調査チームを初めて出動したり、日々の恊働以外にも、見えるかたちでJPFの付加価値を確認していただけると思います。このようなNGO間の切磋琢磨、支援の相乗効果については、今後より強化していきたいですね。
有馬
民間資金に関して、社会的責任に対する意識の高さという意味では、アメックスはリーディング企業の一つですが、エディさんは比較的新しい理事としてJPFをどのようにみていらっしゃいますか。
エディ
エディ操15周年を迎え、現在、JPFに関わる方々とともに設立当初の原点に立って協議する場においても、民間企業の支援拡大は重要なテーマのひとつですよね。企業は社会に貢献するべきという原則論があると思いますが、企業側としては、何かよいことをしている会社で働いているという社員のプライドも重視したいですし、支援の目的と効果測定の説明を株主にしっかりとすることも非常に重要です。特に経営者からみたときに株主総会できちんと説明できるのかという観点は、JPFとして無視できない付加価値となると思います。日本にいると、世界で起こっていることと自分とのつながりがなかなかわからないものですが、身近なものとしてうまく見せていければよいですね。
有馬
おっしゃるとおりですね。数年前から注目されているCSV(CreatingShared Value、共通価値の創造)という考え方は、経営者にとって非常に説明しやすい概念です。R&Dへの投資は長期的なリターンであっても説明可能です。競合企業が面子をかけたような寄付も比較的説明しやすい。同様に、人道支援に投資したお金について経営者が説得力のある説明ができなければ、大きな変化は生まれないでしょう。そのためには、企業全体が国際社会から求められていることを、JPFとしてもきちんと整理してフォローアップしていかねばなりません。

国際社会をとりまく人道支援において日本に期待されること

エディ
有馬さんや金田さんは、国連グローバル・コンパクト(GC)に関わる中で、日本企業が国際社会から期待されていることをどのように感じていらっしゃいますか。
有馬
現状として、日本企業は二極化しているように思います。社会的な課題に対して意識の高い企業が増えている一方、競争と利潤追求が精一杯の企業も多い。GCも、本年2015年で15周年を迎えました。2000年にスタートした「ミレニアム開発目標(MDGs)」※1は、今年でその15年間の期限を終えました。それに続く「ポスト2015」、「持続可能な開発目標(SDGs)」※2が国連総会で正式に採択されましたが、実際SDGsに日本企業が主体的に関わっていくにはまだ時間がかかるかもしれません。社会に企業が主体的に関わっていくには、それぞれの企業なりの哲学や理論をもっていなければならないのです。企業、市民社会がどこまで意識改革をしていけるか。まさにJPFが進めようとしている課題と一緒ですね。
金田
特に、紛争による難民支援という部分では、現在、企業の関わりは多くありません。そういう意味では、先ほどエディさんがおっしゃっていた自分とのつながりが明確になるように、紛争と企業の関係性をJPFから企業に情報発信していく時期にさしかかっているのかもしれません。冒頭でお伝えしたように、これまで寄付金のみだった自然災害支援についても、JPFの皆さんが武田薬品に来られて、災害現場のリアリティを役員や社員、そして労働組合にしっかりと説明されたからこそ、社内の各部署や社員が主体的に動いて、多様なアセットを活用した支援策が実現しています。国連GCに、”Business forPeace”※3というイニシアティブが立ち上がっています。平和あってこそのビジネスです。紛争に巻き込まれる可能性の高い資源系企業や、地雷除去装置など平和構築に必要な機材を供給する企業を中心に真剣な議論が始まっています。企業として紛争予防や平和構築にどのように関わっていけるのか、JPFと企業は、国連GCとの連携を通じて、様々なことが見えてくるかもしれません。
有馬
民間企業や個人の方々から70億円をお寄せいただいた「東日本大震災被災者支援」においても、JPFはコーディネーション力を付加価値として発揮していますよね。被災者を主体とした復興の力をサポートするため、地域に密着して地元の声を聞き、地元どうしや専門家や企業をつなげてきています。
エディ
支援金はもちろん、自分のビジネスを活用して社会課題に対して貢献しようと真剣に考えたという意味では、日本人にとって、東日本大震災は人道支援元年だったように思います。木山さんは、国際社会の支援の現場にいる日本のNGOが期待されていることをどのように感じていらっしゃいますか。
木山
人道支援の根本的な考え方として、日本の平和は日本だけで作っているわけではないということに気づくことが大切だと思います。世界の富をいただき、経済的に豊かだからこその平和であり、その平和が循環していくように努力していかねば日本の平和も守れません。NGOである私たちが、現場で普段持っている意識は、支援を受ける立場にいる人々は、私たちと同様に彼らの人生を送るはずだったのに、さまざまな要因でそうではない状況になってしまっているという大前提です。一方的な価値感を押し付けるのではなく、彼らの意思や考えを尊重し力が発揮できるように、自立をサポートすることが、ひとつの世界でともにいきる市民として適切な関わり方だと思います。彼らのレジリエンス※4が強化されれば、結果的に紛争を減らしていくことにつながっていくのです。
エディ
企業もNGOも個人の集まりですから、人間としてどのような考え方で関わっていくかということが大切ですね。
木山
木山啓子はい、その通りですね。それにしても、日本のNGOは、本当に成長しました。複雑化、長期化する世界の緊急人道支援の現場では、より高いレベルの支援を実施できるプロフェッショナルなNGOが求められています。JPFは、こうした地域でも活動しうる専門性、経験、ノウハウを持ち、高い視座を備えた日本のNGOが、国際社会の他の支援アクターとともにプロフェッショナルとして活躍できる可能性を広げることに大きく貢献してきました。しかし、まだ設立当初に期待していたほどにはなっていません。例えばアメリカやイギリスの支援団体のように、支援の現場に当然いる存在としてさらに成長していきたいと思っています。

つなげることで日本の市民社会の中に支援のプラットフォームを

有馬
日本は支援国としてはまだ発展途上ですが、世界の中でもユニークな発想や高いクオリティ、ノウハウ、技術などがあり、日本らしい支援の仕方をつくるポテンシャルを持っていると思います。JPFの緊急人道支援のプラットフォームで達成したこと、そこから見えてきた課題等を起点に、もう少し広い意味での支援も考えていかねばならないと感じています。最近はPPP(Public-Private-Partnership)といって、企業と公との連携が非常に重要になってきています。日本企業が本来持っている能力やノウハウをいかすためには、緊急人道支援のステージにはおさまりきらないのだろうと思います。幅広い企業によびかけ、長期的なステージにおいて、拡大した対象、例えば自然災害や紛争の被災者のみならず途上国におけるBoP層※5の対象者についても考えていくと、現在のJPFそのものの確認はもちろん、NGOのカテゴリーやセクターは違うかもしれませんが、今後は、第2、第3のJPFが必要になっていくのでしょう。JPFは、その起点として大きな布石となっていくと思っています。
エディ
JPFができたことで日本のNGO間のコーディネーションがとても進み、広がりましたからね。日々の企業活動においても、パートナーシップの重要性を感じています。JPFを日本の市民社会が支えていくような組織になるために、広く呼びかけて賛同を得ていくことが重要ですね。
金田
日本の民間企業はもちろん、国内外に活動を広く伝え、様々なアクターとさらにつながりを広く深くしていくことも重要ですね。例えば、大学の学部との連携もその一つです。次世代をになう理解者として、JPFとつながっていくでしょう。
木山
学生と関わっていると、何か社会によいことをしたいと思っている人がとても多く、社会の発展は必ずしも経済の発展だけではないという考え方をしっかり持っていることを感じられることが希望です。
有馬
こうしている間にも、世界各地の紛争激化による難民・国内避難民、気候変動による災害や干ばつによる被災者など、緊急人道支援を必要とする人々の数は増加の一途をたどっていますね。JPFでは、これまでの15年間の皆様のパートナーシップに感謝し、さらに多くの皆様との広く深い関係を醸成しながら、緊急人道支援のプロフェッショナルとして、そして日本の善意をかたちにするプラットフォームとして、さらに精進してまいります。ぜひ、次の5年、10年、15年と、皆様がこのプラットフォームの可能性を最大限活用してくださることを願ってやみません。引き続き皆様方のあたたかいご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

※1:Millennium Development Goals 。2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言を基にまとめられた、開発分野における国際社会共通の目標。極度の貧困と飢餓の撲滅など、2015年までに達成すべき8つの目標を掲げた。
※2:Sustainable Development Goals 。2012年6月に開催された国連持続可能な開発会議(リオ+20)において,MDGsを補完するものとして設定。2015年9月の国連総会で正式に採択され、2016年から2030年の新たな国際目標となった。
※3:https://www.unglobalcompact.org/take-action/action/peace
※4:立ち直る力。復元力。
※5:Base of the Economic Pyramid層。一人当たり年間所得が2002年購買力平価で3,000ドル以下の階層であり、全世界人口の約7割である約40億人が属するとされる。

企業市民として期待される、企業の役割。市民社会の中で求められる、ジャパン・プラットフォームの役割。-JPF理事 古賀信行×JPF共同代表理事 有馬利男

日本の緊急人道支援のプラットフォームから共に生きる価値の創造を。-JPF理事 原田勝広×JPF共同代表理事 有馬利男