■調査結果■
倉庫の管理と配布方法最終配布ポイントでの資材配布状況等資材調達配布の遅延について

[4-1] 倉庫の管理と配布方法
  (1)倉庫管理
 配布物資は契約業者によってルサカよりマザブカ、チョマの倉庫に一旦納品され荷分けされ、配布数量がそろったところで配布センター倉庫(「ザ」国政府建造)へ輸送される。倉庫の管理はWVIの共通基準で管理されており、搬入、搬出の記録、納品物の損傷等がチェックされる。損傷しているものは記録され契約業者にもレポートされる。
[写真右上:配布センター倉庫(チョマ)]
   夜間の管理に関しては警備員を置いているが、配布センターの倉庫の中には人の住んでいない場所に建っているものもあり、そういった倉庫は納品日から配布日までの期間、村で決めた見張り役が近くに泊り込み警備している。これらの倉庫は、コンクリート製で充分風雨に耐えうる頑丈な建物であった。
[写真左:メイズ種子の入った大袋]
  (2)配布作業
 ADP(地域開発プログラム)スタッフが、受益者リストに基づいて一人ずつを呼び、記帳ノートに署名をもらい、二重配給や配給漏れがないよう慎重に業務遂行されている。ソルガムと落花生は10Kgバックで到着するため、量りで2Kgずつ計量し配布している。今回全部の物資を一度に配布できない事から、署名欄を2箇所作成し各回サインをもらう方法、受け取った物資の欄にサインをもらう方法が取られている。
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[4-2] 最終配布ポイントでの資材配布状況、
及び現地事業実施責任者等への聞き取り
  (1)南部州カロモ県シアチテマ地区の「ナルージャ最終配布ポイント」(AAR,WVZ担当地区)
11月18日
 「ナルージャ最終配布ポイント」は、チョマの中心地から幹線道路(舗装道路)をリビングストン方面へ進み、そこから更に無舗装道路を北へ入った所に位置する。我々が「ナルージャ最終配布ポイント」へ到着した時には、ADPスタッフによるメイズ、ソルガム、UREA(エジプト製)の配布を実施しており、受益者からの熱烈な歓迎を受けた。ADPスタッフは、資材配布の際に受益者一人ずつを呼んで記帳ノートに署名をもらい、二重配給や配給漏れがないよう慎重に業務遂行していた。同日は受益者286人を対象とし配布するとのことであった。また、ソルガム(落花生も同様)は10Kgバックで到着するため、量りで2Kgずつ計量し配布していた。資材を保管する倉庫(「ザ」国政府建造)は、コンクリート製で充分風雨に耐えうる頑丈な建物であった。
 配布状況は、D-COMPOUNDは全量配布済みでメイズは近日中に終了するとのことであった。ソルウェジ豆、ソルガム、落花生とUREAは一部配布中で、一部はチョマの倉庫からの運搬待機中。特にUREAの一部はルサカからチョマの倉庫への到着が遅延しているとのことであった。
 ADPスタッフからの聞き取りによると、10月下旬に降雨があり既に播種した受益者が多数いるとの報告を受けた。しかし11月に入って降雨がなく、このままでは立ち枯れの可能性があるとのことであった。また、配給を受けた受益者は、ここから受益者自ら、自転車、牛車(共同運搬)等で運搬するとのことであった。
[写真右上:受益者リストに基づく本人確認作業]
  (2)南部州カロモ県トゥワチヤンダ地区の「ハブリレメインセンター」(AAR,WVZ担当地区)
11月19日
 「ハブリレメインセンター」は、チョマの中心地から無舗装道路を北へ入った所に位置する。ここではプロジェクトマネージメントコミッティー(PMC)による会合がもたれた。この会合ではコミッティーメンバー紹介の後に配布状況の説明があった。内容は前日訪れたシアチテマ地区と同様の状況であったがD-COMPOUND、メイズ、ソルウェジ豆は、概ね全量配布済みとの報告を受けた。また、同地区でも10月下旬の降雨の後多くの受益者が播種を終えており、次回の降雨待ちであるとの報告を受けた。更に多くの受益者から、種子と肥料の配布量を増やしてほしいとのリクエストが同コミッティーにあがっているとの報告を受けた。
[写真左上:芽生えたメイズ]
  (3) 南部州チョマの倉庫、南部州カロモ県シアチテマ地区の「ムバンガメインセンター」(AAR,WVZ担当地区)
11月20日
 この日はまず、ルサカから運搬される配布資材を一時保管するチョマ近郊のチョマCHOMA FRA (Food Reserve Agency)倉庫を視察した。この倉庫は「ザ」国政府所有の大型倉庫で、5連以上ある倉庫の1つをAARが2ヶ月間の契約で借用している。倉庫にはUREA、ソルウェジ豆と落花生が少量積まれており、現場へ運搬する車両待ちのとの報告を受けた。またUREAに関しては、残りの130tがルサカから運搬されておらず待機中との報告も受けた。その後、11月19日に訪問した南部州カロモ県シアチテマ地区の「ムバンガメインセンター」でのプロジェクトマネージメントコミッティー(PMC)による会合参加のため移動した。同センターは、「ナルージャ最終配布ポイント」より、12〜18Km手前に位置する。この会合ではコミッティーメンバーの紹介の後に、現時点での状況として、受益者の多くが10月下旬の降雨で播種を終了し次回の降雨待ちの状況で、もし近日中に降雨があれば良い収穫が得られるだろうとの報告を受けた。また、本事業における受益者の選定は、このPMCのメンバーによって決定されたとの報告を受けた。この日は、PMC 事業の一環としてキャッサバの挿し木用苗木が多数到着しており、自助努力による食糧確保を実施していることが窺われた。
[写真右上:見渡す限りメイズ畑がつづく(受益者宅の畑にて)]
  (4)南部州マザブカ県マゴエ地区の「マゴエ最終配布ポイント」及び「ムバヤムスマセンター最終配布ポイント」(WVJWVZ担当地区)
11月21日
 「マゴエ最終配布ポイント」は、マザブカの中心地から幹線道路(舗装道路)をチョマ方面へ進み、そこから更に無舗装道路を東南へ入った所に位置する。「ムバヤムスマセンター最終配布ポイント」は更に奥に入った所に位置する。各最終配布ポイント共にレンガもしくはコンクリート製の倉庫を所有している。配布状況は、この日D-COMPOUND、メイズ、ソルガムの配布を行っていた。但しD-COMPOUNDの一部、UREA、ソルウェジ豆と落花生はルサカからの運搬待機中もしくはマザブカの倉庫から運搬中との報告を受けた。また「ムバヤムスマセンター最終配布ポイント」では、今回の配布対象受益者以外の農民が集まり混乱が生じているとの報告を受けた。
  (5) 南部州マザブカ県チブナ地区の「チブナセンター最終配布ポイント」
(WVJ,WVZ担当地区)
11月21日
 「チブナセンター最終配布ポイント」は、マザブカの中心地から幹線道路(舗装道路)をチョマ方面へ5Km進み、そこから更に無舗装道路を東南へ約60Km入った所に位置する。この日は在ザンビア特命全権大使をはじめ、数名の大使館員同行のもと調査を実施した。我々がチブナセンターに到着した際は、受益者をはじめ現地業務スタッフによる盛大なセレモニーが行われ、大使は本事業に関するスピーチをされた。チブナセンターはコミュニティーセンターで、資材は現在休校中の教室に保管されていた。配布状況は、この日は受益者368名を対象にD-COMPOUND、メイズ、ソルガム、落花生の配布を実施していた。但しUREA、ソルウェジ豆の全量、D-COMPOUND 400kgがルサカからの運搬待機中もしくはマザブカの倉庫から運搬中との報告を受けた。
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[4-3] 資材調達配布の遅延について
   この調査では、配布状況の視察と現地事業実施責任者等への聞き取りを実施したわけだが、全資材及び全量ではないものの、一部の資材につき遅延している状況にあった。この件に関し、AARとWVJから以下のように遅延理由の説明があった。
  (1)AARとWVZ担当のカロモ県シアチテマ地区とトゥワチヤンダ地区
  UREA調達の遅延
 雨季開始前の8月から10月にかけては、「ザ」国内で資材の需要が高まる時期にあたる。特にUREAは、「ザ国」政府が莫大な量を買い占めており極端に不足している時期にあった。このような状況の中、AARが当初契約したルサカの肥料業者からの同肥料引渡しが遅れていた。AARは、本事業に支障(調達遅延)をきたすと判断し、当初契約していた肥料業者を撤回し、新しい肥料業者と売買契約を交すこととした。このような経緯から、ルサカでの調達とチョマの倉庫への運搬が遅延した。
 尚、後日11月25日にチョマの倉庫に全量到着したとの報告を受けた。
  (2)チョマの倉庫から最終配布ポイントへの運搬の遅延
  −運搬車両の故障−
 チョマの倉庫から最終配布ポイントへの道路事情は非常に悪く、ルサカの大手運輸業者と契約し、直接大型トラックによる運搬はコスト面でも通行面でも不可能であることから、チョマ近郊の中小運輸業者と契約した。しかし車両は、老朽車や整備不良車が多いことから、契約の際に、車両の点検、カバーシートやロープの有無や車両故障時のバックアップ態勢の確認と保障を義務付ける等の予防措置をとった。それでも運搬途中時の故障や、運転手が道に迷う等の事態が数件発生し遅延した。
−運搬数量の間違い−
 チョマの倉庫からの積み出しの際、WVZ倉庫スタッフによるメイズとソルガムの袋量の数え間違いにより、間違った配布数量(ソルガムの過剰運搬)が最終配布ポイントへ運搬されたケースが数件あった。この間違いは積み出し開始の数日間に発生し、後日は起こっていない。しかし、既に最終配布ポイントに届いてしまったソルガム余剰分を、他の最終配布ポイントへ運搬する作業に時間を要し遅延している。現在、各最終配布ポイントでの余剰と不足分の情報を整理し個数調整を実施中。
−配布プランの数値の間違い−
 WVZ配布チームのスーパーバイザーが作成した配布計画に記載された、各最終配布ポイントへの運搬数量に計算ミスがあり、間違った数量の資材が最終配布ポイントの数箇所へ運搬された。このため資材の不足と余剰が発生し、受益者への配布が遅延している。現在は配布計画の訂正がAARによってなされ、個数調整を実施中。
  (3)配布チームの訓練不足
 カロモ県以外の事業地区(マザブカ県、モング県、カラボ県)では、WVZの緊急食糧援助チームが既に形成されているが、カロモ県では緊急食糧援助チームがなかった。このためWVZ・ルサカ本部は、本事業に係わるスタッフを新規に雇用し訓練を開始した。しかし、訓練を受けたスタッフがチョマ赴任を拒否したことから、物資管理スタッフがスーパーバイザーを兼任するに至った。つまり同スーパーバイザー兼物資管理スタッフはスーパーバイザーとしての訓練を受けないで、2つの業務を兼任することとなり、2つの主幹業務の質が低下した。また、現場で業務遂行する配布チームの訓練については、1日のワークショップのみで実施するに至った。従って、WVZが本来持っている既存のノウハウや情報基盤が充分に生かすことができず配布遅延の原因となった。現在、南部州を総括するWVZ担当者が配布スタッフチームを指導し、AARスタッフの指揮で能率向上を図りながら実施している。
[写真右上:受益者世帯の親子]
  (2) WVJとWVZ担当の南部州マザブカ県マゴエ地区、チブナ地区
 同地区についても、上述した(1)の、(3)を除く、(1)及び、(2)の内容等による資材調達配布の遅延が考えられる。もう一つの要因としては、日本からの援助資金送金到着が遅れたことで、資材調達の開始時期が遅れたことがあげられる。
  (3) WVJとWVZ担当の西部州モング県ナムソ地区、カラボ県ナカンデ地区
 同地区は調査を実施していない。筆者の私見ではあるが、南部州よりも遠距離であることと、上述した様々な遅延要因が考えることから、本格的な雨季に入るまでに全受益者への全量配布が完了できるか懸念されるところである。
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