[2]調査結果
〈3〉課題
安全対策手続コーディネーションの重要性緊急から復興活動の形態
スタッフの状況能力向上と評価ジャパン・プラットフォームの役割

 (1)安全対策
   アフガニスタンの活動においてスタッフの安全問題が当初より非常に懸念されていた。
 現在までのところ大きな問題は発生していない。しかしながらアフガニスタンは武装勢力が割拠し、当局の治安能力は極めて低いと思われる。
 現在活動中の各団体は、UNの治安担当者、現地行政等と連絡を持つとともに、紛争地域での経験等を参考に、国際機関やNGO間で尊重されている安全対策をとっている。
 例えばMeRUは詳細な退避計画を含む総合的な安全対策指針をもち、プロジェクト責任者が全てのスタッフに徹底をはかっている。このことにより医療専門家の安全が確保されている。また他の団体でも施設・設備管理、移動管理等様々な対策をとっている。
 今回一部の団体では全てのスタッフに安全対策に関する指針等が周知徹底されているとはいいがたい面があった。特にスタッフの交代時においては、時間をとって安全に関するブリーフィング等を現地でもルーティン化する必要がある。
 特に大規模な活動を行っている団体は、施設・車輌等を狙う強盗等の発生も充分想定されることから対応には万全の配慮が必要である。
 また各団体の活動参加者はUN等の安全教育を事前に受講しておくことが望まれる。
 さらに今回車輌・無線について以下(2)に述べるように煩雑な手続等大きな労力をかけて現地にもちこむ作業が行われたが、整備の行き届いた車輌を所有することはスタッフの安全上からも不可欠であることが理解できた。単純な故障もスタッフの危機につながる場合があり、また車輌調達が不便ななかで無理な行動計画をたてることもリスクを増大させる。
 無線についてもUN・他の国際NGOとの情報共有、移動時の連絡等衛星電話等では代替できない面をもっているため早急の配備完了が望まれる。
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 (2)手続
   今回のアフガニスタンでの活動では、隣国パキスタンでの行政手続(NGO登録、車輌・無線免税、保税化等)に大きな労力がかかり各団体の活動の上で大きな負担となった。在地日本大使館の全面的なサポートを受けながらも現地手続は遅々として進まないばかりか朝令暮改、担当官ごとの対応の相違等に苦しめられた。
 しかしながら、これらはアフガニスタンでの事業の初動立上において通過しなければならないものであり、各団体がその作業を通じて現地事情を理解し、ロジ能力を高める一助となった。
 またアフガニスタンにおいても暫定政府機構、地方行政機構等から新たな手続が続々と導入されており、手続上多くの困難をともなった。アフガニスタンについては大規模で持続的な支援活動が予想されることから今回の障害も復興を含む全体のプロセスとして捉えれば通過点であるかもしれない。
 ジャパン・プラットフォームの各団体は情報交換をしながら手続を進めたが、各団体それぞれ対応も異なることから、情報共有を密接に、協力できる点では協力するというゆるい連携での作業となった。
 今後も情報共有、また必要に応じた日本政府や現地政府への共同の働きかけ等ジャパン・プラットフォームの利点をいかした相互連携構築に努力するとともに、各団体も実際の現地活動に不可欠なロジ支援体制の強化にあたることが望まれる。
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 (3)コーディネーションの重要性
   アフガニスタンならびにパキスタンは長年の内戦から既存の難民キャンプ等もあり、人道支援について様々な経験が積み重なっている。このため支援にあたっては現地で望まれる支援の調査、各NGO間での調整、UNとの調整が不可欠である。このためには常駐スタッフが負担となるコーディネーション業務を行う必要があり、それを見込んだ人員配置が必要となる。
 今回訪れた各団体はそれぞれコーディネーションに充分な配慮をしていたと考える。UN・国際NGO・現地NGO、行政機関等のコーディネーションにおいて中心的役割をまかされたNGOもあり日本のNGOとしてよい経験となっている。
今後日本国民に対しても、現地のニーズにあった充分調整の行き届いた支援を行う必要がある点理解を求めていく必要があるだろう。緊急フェーズの活動であってもコーディネーションの重要性はいささかも減ずるものではなく、組織的対応が各NGOに求められている。また持続的支援にあたってはさらにコーディネーションが求められ各団体が積極的に関与すべきであろう。
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 (4)緊急から復興
   調査時期は緊急フェーズの最終局面にあたり、また復興への移行の第一段階という時期にあたった。今後アフガニスタンでは海外難民国内避難民の帰還とともに地域での復興支援が本格化する。UNの担当者はアフガニスタンの状況を考えた場合、NGOも長期的な関与が必要であるとし、今後の活動には短期的な視野での人材の投入ではなく専門家を含む長期にわたる要員の確保が必要であると指摘している。またセクター別の支援からより地域単位への総合的支援に責任をもつ必要があると述べている。
 緊急から復興への移行には引き続き継続的な公的支援が必要と考えられるが、同時に緊急から復興にむけたNGO側の体制整備が強く求められている。
 特にジャパン・プラットフォーム資金により初動立上を行ったNGOは、保有する資財を用いて現地での活動を発展させることができる条件にあり、今後復興支援において、新たにアフガニスタンに来る他の日本のNGOの先駆的役割も担いながら課題に取り組むことが期待される。
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 (5)活動の形態
   今回訪問した団体の現地での活動は自立型とパートナー活用型に形態が分類できる。自立型の団体は現地運営体制がローカルスタッフ等を多数雇用し大規模な活動を行っており、パートナーシップをとる場合でも資金や物資を提供してもらい自己の組織体制のもとでその物資を活用して支援活動を行なっている。パートナー活用型の団体はパートナーシップの相手側に基本的な支援体制が組まれており、この組織を活用し、自己団体の専門性やノウハウを生かした事業計画を実行する形をとっている。もちろん自立型団体でも地元NGOの活用や業者へのアウトソーシング等のパートナーシップ、パートナー活用型の団体でも事業実施人材の投入等部分的に自立型活動に近い活動を行っているものがある。
 NGOの活動形態については多様な形が保障されてしかるべきであるが、その実態はより細かく説明される必要がある。自立型組織は自己点検をたゆまなく行うとともに政府や民間寄付者への事業説明を充分に行う必要がある。パートナー活用型組織はパートナーと詳細な実施契約を結び受益者の特定、事業内容、報告内容等を定め実施管理を行う必要がある。NGOは多様なパートナーと連携し事業を行っている姿も評価されるので各団体は詳細にその内容を公開することが望ましい。またジャパン・プラットフォームとしてはいずれの形態をとるのであれ日本のNGOのキャパシティ・ビルディングがはかられることを支援にあたって担保すべきである。
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 (6)スタッフの状態
   今回個別のスタッフ・インタビューでは各スタッフから過労や疲労、仕事に関する切迫感が感じられた。これらはスタッフがボランティア精神により現場では昂揚感にもとづいて活動をしているものの能力を越えた状態にあることを示唆している。
 実際交代体制が充分にとられておらず、ノウハウのあるスタッフが張り付いた状態となっている団体が目に付いた。
 アフガニスタン現地は治安状況も不安定で生活環境、自然状況も厳しく日本では想像できない精神・身体状況にスタッフが追い込まれることが予想される。緊急支援の場合は短期的な外地での休暇、現地での休息を保障する必要性を感じた。また復興期にあっては、複数スタッフ制等により定期的な休暇を保障する体制が求められる。
 今後助成金において本部運営費、特に本部派遣スタッフの人件費を助成する場合、スタッフの交代や労働条件を助成の際の条件とし、充分な助成(交代スタッフ要員費用をふくむ)をおこなうといった経済的バックアップをNGOに対して行うことが望ましい。
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 (7)能力向上と評価
   緊急支援においてスフィア・スタンダードやUNHCRや他の国際団体のマニュアル等を参考に活動をおこなうべく現地で参照しながら計画をたてている団体もあった。またそれらの書籍は現地にはないが、スフィアやUNHCRの教育をうけた職員を配置しプロジェクト管理をおこなっている団体もあった。
 今回の調査個別のプロジェクトに対し評価基準を定めて評価するといったことはしていない。また今後の調査においては緊急支援の場合、支援の結果を反省材料として検証するために評価を行うことは有効かもしれないが支援途中で評価を入れることに躊躇なしとはしない。
 しかしながら一つの評価方法として、緊急支援であっても緊急支援の様々な評価基準について知識をもったスタッフが配置してあるかを問うことは可能とおもわれる。
 今後の助成にあたっては、知識をもった緊急要員の本部人件費を助成するかわりに助成にあたってはこれらのスタッフが現地やバックアップ体制に投入されることを条件 とするという方法も考えられる。これらの促進策により各団体は常時スタッフの能力向上につとめ、支援のスタンダードについて学習し、緊急時には柔軟に現地で最善をつくすといった方向で取り組むことが期待できる。
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 (8)ジャパン・プラットフォームの役割
   ジャパン・プラットフォームは事務局スタッフ一名をイスラマバードに長期派遣し、主として広報対応をおこなった。各団体からはジャパン・プラットフォーム事務局の現地機能強化策としてコーディネーションを行う要員、事業や会計のモニタリングを常時行う要員等の派遣のアイデアが出された。もとよりNGO活動は各団体の自主性を重んじる活動であるが、緊急支援活動でかつ評議会で定められた地域で、大きな事業目的を共有するジャパン・プラットフォーム事業にあっては共同スタッフを現地にもつ意義は十分あると考えられる。
 緊急時には団体間のコーディネーション・情報共有等をすすめ、ジャパン・プラットフォームを代表する事務局次長クラス1名、会計や調達契約業務等をモニタリングし、適切なサポートを行うスタッフを1名、ジャパン・プラットフォームの各団体の現地活動を紹介しジャパン・プラットフォームとしての広報活動を推進するスタッフを1名、計3名程度のチームが活動を行うことは検討に値する。
 その場合日本側の体制も同等かそれ以上が確保されること、スタッフは安全面やロジ面で独自に活動ができるだけの知識能力をもっていることが条件となる。
これらはジャパン・プラットフォームの本部運営体制の整備とともに現実の課題としなければならない。その間各団体と協力し、限られて資源のなかで最大限の活動支援体制が組めるよう体制を整備する必要がある。
【付記:共同事務所】  今回ジャパン・プラットフォーム参加4団体で共同事務所を10月14日〜04月14日イスラマバードに開設した。
◆共同事務所のメリット
a)コスト効率化(共有スペースの利用)
b)情報共有
c)セキュリティの向上
d)スタッフの精神ケア
e)訪問者との接触
 考慮すべき点は事務所設営の事務的負担や作業を公平に分担できるかという点ならびに各団体の支援計画上いつまで共用できるかの調整が必要。
 今回はアフガニスタン支援という大型オペレーションであったため効果があった。ただし今後ジャパン・プラットフォームとしてスタッフ派遣等のバックアップ体制の整備が課題である。
【付記:共同調達作業】
 車輌・無線等についても発注時の交渉、調達作業、免税手続、輸送、登録等の作業において情報交換、関係機関への働きかけ等の共同作業が行われた。特に先行する団体からの情報も参考にできる点ロジ能力の弱い団体にとりメリットはあったと思われる。また在外公館を通じた現地政府に対する働きかけについては共同で行うことのメリットは大きい。
 ただし実際の作業は困難を極め、各団体で対処しなければならない場合も多かった。
 調達作業についてもジャパン・プラットフォームとしてのサポート体制の整備があればより実際の支援活動に専念できるとおもわれる。
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