HiN
Peace NGOs Hiroshima


緊急支援事業計画書
事業内容における専門家派遣について【pdf】
事業終了後の映写機材の活用について【pdf】
指示系統図
事業地マップ


緊急支援事業計画書

申請年月日 2005年8月17日 申請番号 2005− 
プロジェクト名 スマトラ島沖地震被災者支援(緊急支援事業)
実施事業名 スマトラ島北部 アチェ州における心と体の健康プロジェクト
実施団体名 特定非営利活動法人 平和貢献NGOsひろしま
事業対象地状況 【個別事業地毎被災者総数】
インドネシア、スマトラ島西部海岸のアチェ州では,死者129,498人,行方不明者37,066人,避難民128,803人と発表されている。そのうちアチェ・バラット県では,死者10,874人,行方不明者2911人,避難民10,209人と発表されている。
根拠(5月19日付け国連人道情報センター等)
【〃  公共等施設損害状況】
基礎インフラ(道路・橋・学校・診療所など)及び個人の住宅は,アチェ州の州都バンダ・アチェ及び西海岸沿い一体においては,ほぼ壊滅的な損害を受けている。アチェ・バラットの対象4郡において,1200軒の住居が全壊,268軒は半壊と459軒は加水被害を受けた。アチェ・バラットでの被災民の居住状況は、18276人(36%)がキャンプ生活、25921人(51%)がホスト・ファミリーとの同居、6600人(13%)が生活センターでの生活を強いられている。
根拠(5月2日付け国連人道情報センターや政府資料,地方政府資料 等)
【国際機関・援助団体対応状況】
スマトラ沖地震発生以降,340以上の国際機関,国際NGOがアチェ州にて人道支援に携わっている。現在アチェ州における人道支援は,UNOCHAが国際機関・各援助団体全体の調整ミーティングを主催しているほか,各種セクターミーティングを開き、各機関と団体の連携や調整をしながら実施されている。
また、インドネシア政府も被災者支援政策に基づくアクション・プログラムに従って救援活動をしているが、今回の被害はあまりにも甚大なため,被災地域の復興自体は遅れが生じており,結果的に被災民が不便な生活を余儀なくされている。安全な水の供給、環境衛生の改善については、いまだ大きな課題であり、多くの国際機関、援助団体が取り組んでいる。下痢等の健康障害を訴える住民も多く、早急な被災民の健康対策が求められている(※1)。健康に関する問題は、身体のみでなく、精神面にも及んでいる。WHOは生き残った人たちの恐怖・無気力・情緒的な麻痺・不信感・不眠などの精神的な障害を指摘しており、精神保健面で支援の投資は最も重要であると報告している(※2)。
根拠(※1)7月上旬に行なわれた、幣団体によるニーズ調査(※2)1月上旬にWHOが実施したアセスメント調査の結果報告書
事業概要

弊団体は,昨年11月26日に設立された団体であるが,PWJの支援を受け,3月19日〜26日にかけて,調査員を現地に派遣し,現地の状況・ニーズ把握等を実施した。また,PWJが実施するスマトラ島沖地震・津波被災者支援事業の事業地(インドネシア)に2名のスタッフを派遣し,約3ヶ月間、業務に従事する実務研修を実施した。
今回の事業においては,緊急から復興への移行期における経過的事業として,PWJの全面的支援の協力を受けながら,支援活動を実施する。

〔参考:PWJとの連携について〕
○ 事業運営、管理に関する指導,助言
○ 現地情報の収集
○ 現地事務所、宿舎、通信手段の利用

1 現状分析

・ 反政府勢力への支持が強いとされる支援対象地域は,これまで政府による開発支援が遅れており,2003年の同国政府及びアジア開発銀行(以下、ADB)の調査によると,ウォイラ3郡の人口の37%,アロンバン・ランバレック郡の人口の45%は貧困層に属するとされている。

・ 弊団体は2005年3月上旬から7月上旬にかけて実施した現地調査や実務研修で、ピースウィンズ・ジャパン(以下、PWJ)と連携をしつつ支援活動を行ってきた。今後も、PWJの協力を得ながら、弊団体の専門的職員の派遣を通じて、被災民の生活の正常化、心と体の健康を取り戻し、維持することに焦点をおいた支援を行う必要があると考えている。

・ 復興が進みつつあるインフラ等の整備に対して,被災民の生活環境の改善についての支援は十分に行き届いておらず、安全な水の確保、衛生環境については依然として多くの課題が残されている。特に、今回想定している支援対象地域は、上水設備が完備しておらず、井戸から直接生活用水を得ている。しかし、多くの井戸は深さ2m前後の浅井戸であり、井戸を覆うもの(ふたあるいは屋根)はなく、トイレに隣接して作られているため、その水はすでに汚染されている。また対象地域で井戸周辺での洗濯、排泄など、水質汚染を助長させる行動がよく観察される。これらの行動は、健康教育によって改善可能であり、水を介しての感染症を予防することができる。

・ 被災地の小学校では、地震や津波で衛生設備が破壊され使えなくなっているところが多く見受けられる。トイレについては、形は残っていても汚物タンクや排水パイプが詰まって使えないケースが多く、子供たちは校舎の裏で排泄したり、家や避難所に帰って用をたしている。多くの学校では、井戸が水の供給源であるが、水質汚濁がひどく使えない状況である。それにもかかわらず、小学校教員へインタビューを行った結果、多くの子供たちが学校の井戸の水を直接飲んでいることがわかった。

・ 災害時の精神医療の専門家の研究によると、被災した個人と地域社会に対する最初にしてもっとも一般的な段階での社会精神医学的な手当ては、被災したという事実に言動による承認を与えることとしており、被災者に対する援助者のことばかけやメッセージの声は、被災者が力を取り戻し、立ち直りの道を辿り始めるのに十分な手当てになると考えられている。スマトラ島では,被災後,被害の最も大きな地域を「HIROSHIMA」と呼び,被災地の状況と広島の原爆投下の惨劇とを重ね合わせ,広島に共感している。このため,広島の復興過程の紹介や応援のメッセージが被災者に勇気を与え、復興への意欲が高まると考えられる。また、映画上映やスポーツ交流なども、緊張が続く避難生活の中で、精神的なリラックス効果やフラストレーションの解消に大いに役に立つとされている。

2 事業目的

被災者の心身の健康を取り戻すために、衛生環境改善事業として巡回衛生教育を実施し、衛生設備の修復改善を行ない、心のケアとして映画上映等の平和文化活動を実施する。

3 実施事業

(1) 衛生環境改善事業
衛生環境改善とは、人々が水及び衛生環境に関連した疾病を予防するための行動を起こし、また水・衛生設備の改善による利益を最大限にもたらす試みである。衛生環境改善において、最も大切な実践は二つあり、それは安全な排泄物処理と、排泄物に触れた後の石鹸を使った手洗いの徹底である。
(Suzanne,F. Joy,M. and Marion,O. (2000) Hygiene promotion: A practical manual for relief and development, ITDG Publishing)この考えをもとに、幣団体では、衛生環境改善のために衛生教育と衛生設備修復を行う。小学校に衛生設備を整え、衛生教育を行っていく方法は、もともと学校が持っている機能(地域住民が利用可能な公の機関、教育の場)を活かしたアプローチである。途上国において初等教育を目的とした教育機関は地域の中心的役割を果たしており、ここを拠点として保健教育を行うことは効率的であり地域に対するインパクトも大きい。学童に対して健康教育を実施することは、学童の健康状態の向上にとどまらず、子供から子供へ、子供から親へ知識が波及し、ひいては地域住民の知識向上が期待できる。
対象地域は、ウォイラ郡、ウォイラ・バラット郡、アロンガン・ランバレック郡の3郡の小学校で、そのうち衛生教育は、アチェ・バラット県教育局が復興支援重点校としてあげている15校を中心に行い、衛生設備修復は15校のうち、学童数が多く、衛生設備の修復が必要と判断される学校を2校選定し実施する。そして、その2校をモデル校とし、学校衛生環境改善のため教育、啓蒙活動に活用していきたい。詳細は以下に述べる。

(1)‐1 巡回衛生教育(15校)
対象校を一校ずつ訪問し、手作りの紙芝居やポスターを利用した衛生教育を行う。衛生教育の内容は、衛生についての基本的なこと(手洗い、トイレでの排泄、身体の清潔、環境整備、水の汚染を防ぐ方法など)を主とする。各小学校を最低2回は訪問し、巡回衛生教育の効果をモニタリングする。また、健康教育が巡回時だけに終わらず、教員が授業の合間を使って衛生教育を行えるように、教員へのトレーニングを開催し、教材を各小学校の教員に配布する。教員トレーニングの一環として、衛生設備の整ったモデル校への訪問を実施し、学校内に衛生設備を整える事の重要性を学ぶ機会を設ける。この事業において学校訪問および教員へのトレーニングには、各地域の保健センタースタッフに企画、実施に参加してもらう。

(1)-2 学校衛生設備設置(2校)
衛生習慣に関する子供達の行動変容(トイレを使う、手を洗うなど)を効果的に促がすには、衛生教育のみならず、学校での実践を行うことが重要である。地域でモデルとなる学校を示すことで、他の学校への波及効果、また教員達の意識改革が期待できる。そのために学校衛生設備の修復は必要であると考える。
トイレは、排泄物を安全に処理するため、3槽式浄化槽を完備する。この浄化槽は、排泄物が1槽、2槽、3槽と約3ヶ月かけ移動していく経過の中で、腐敗が起り、病原菌や寄生虫卵が死滅する仕組みになっている。50人以上の集団の排泄物処理を可能にするため、8.1×2×2mの大きさのものを設置する。この浄化槽設置には、幣団体の土木施工専門家を派遣し、現地の職人に技術指導を行う。トイレの部屋数は、WHOが推奨している、児童50人に対して一部屋という基準を可能な限り実現する。トイレの部屋の中には、排泄物を流すために使用する水をためておく小さなタンクを設置し、トイレの外には手洗い場を設ける。トイレの使用を可能にし、手洗いを徹底させるためには、学校内で水を確保しなければならない。トイレ修復予定校に適切な水の供給源がない場合は、井戸を設置する。支援地域では、比較的容易に井戸を掘り当てることができることや、地域住民も比較的井戸を掘ることに慣れているため、各村の村長と相談の上、住民の中から極力労働力を得ることとする。

(2)平和文化活動による心のケア
文化的な飢餓状態にある避難生活においては、映画芸術そのものが,「心の栄養」として,心のケアの一助となりうることから,支援対象地域の小学校、バラック集落などを中心に,巡回型で映画上映を行う。上映作品は、現地教育関係者、幣団体ローカルスタッフとともに検討し、楽しさや勇気を感じられる作品を中心に選定する。場所については、小学校に比較的広い教室がある場合は、その場所で行い、ない場合は、野外、あるいはバラック集落の集会所で銀幕を設置して上映する。 また上映に併せ、参加者に映画の感想をお互いに話す機会や,被災者同士で被害のことを話し合う場を設けたりするなどして,会場を活用したアフターケアを実施する。実施時期は、9月中旬からで、巡回衛生教育を実施し、学校側とコミュニケーションが取れている地域で上映会を開催する。
この取り組みは幣団体としても初めての経験であり、広島で、これまでに行われてきた平和文化活動の中でも、きわめて稀な試みである。この記録を克明に残し、分析を加え、ひろしま平和貢献構想が掲げている、"復興支援プロジェクトの「広島方式」の構築"へ繋げたいと思っている。そのデータ収集及び平和文化活動の現地での実行のため幣団体専門家を派遣する。 この映画芸術を使った活動は、今後も幣団体の特色ある活動の一つとして、他の地域での復興支援に活かして行きたい。今回、購入させていただくプロジェクターおよびビデオカメラは、幣団体で管理し、今後の活動に活用していきたいと考えている。

事業期間 2005年8月23日〜2005年11月20日(90日間)
裨益者計

6,000人

事業内容 地域名 計画数値 裨益者 事業費
ウォイラ郡、ウォイラバラット郡、アロンガンランバレック郡 衛生環境改善事業(小学校15校を対象とする) 3000人 785,000円
ウォイラ郡、ウォイラバラット郡、アロンガンランバレック郡 小学校を中心としたコミュニティ15地域を対象にした心のケア支援事業 3000人 232,000円
合計 1,017,000円
執行体制状況 1 現地執行体制

アチェ州にあるPWJのムラボー事務所の一部を間借りし,同事務所を拠点に,当該事業の統括を行う。また,同拠点を中心に,国際機関,国際NGO,インドネシア政府との連絡調整を行う。(弊団体スタッフ:2名)

2 国外連絡先との連携

事業については,PWJから,助言・指導を受けながら実施する。インドネシア政府とは,事業の報告,支援の調整を行うこととする。UNICEFとは情報交換、助言、健康教育用教材、衛生キットの提供を受ける。

    人役計 従事業務 事業費(人件費)
本部人役(広島) 1.0人役 本部調整員
事業計画に沿って、詳細な調整、連絡業務を現地プロジェクトチームと行う。また現地からの報告、進捗状況を含めてJPFに連絡、報告する。
600,000円
現地人役計 7.0人役 2,184,000円
  国際スタッフ人役 2.0人役 現地調整員(駐在)2人
現場における事業実施、モニタリング、プロジェクトオフィサーへの指揮を行う。会計業務も担当。
1,800,000円
現地雇用人役 2.0人役 プロジェクトオフィサー
現地調整員の通訳、補佐業務、現地他団体との調整を行う。現場では、衛生環境改善事業、平和文化活動の実施、現場監督、資材調達を行う。
210,000円
1.0人役 プロジェクト・アシスタント
プロジェクトオフィサーの補佐業務を行う。
84,000円
1.0人役 オフィス・アシスタント
事務所内の環境整備、庶務業務を行う。
45,000円
1.0人役 警備員
事務所安全管理のため警備を行う。
45,000円
合   計 2,784,000円
国外連携先 団体名称 連携状況
  NGO PWJ 事業全体の連携・調整
現地行政府 インドネシア政府 報告,支援の調整など
国際機関 UNICEF 衛生設備建設、健康教育に関する助言、調整
総事業費(詳細設計は別紙) 6,472,040円 財源状況(自己財源:  0円、JPF財源:6,472,040円)
事業スケジュール
プロジェクト 8月 9月 10月 11月
支援計画の詳細策定
教材、物品等準備
関係機関との調整
平和文化活動
衛生設備修復
巡回衛生教育
評価
報告書
監査