JEN
Japan Emergency NGOs


生活改善支援事業計画書



生活改善支援事業計画書

申請年月日 2006年3月9日 申請番号 2005 −
プロジェクト名 スマトラ島沖地震被災者支援
実施事業名 ※ハンバントタ県における生活改善支援事業(Ph.2)
実施団体名 特定非営利活動法人ジェン(JEN)
事業対象地状況 【個別事業地毎被災者総数】

死者約4,500人、行方不明者約1,341人、家屋破壊数4,047世帯、津波の影響による被災者数(避難生活や収入源喪失を含む)90村16,827世帯(4月5日時点)

根拠(ハンバントタ県知事府)
【〃  公共等施設損害状況】

区役所を含む政府・公共建物の9割(76軒)被災、漁港5港が被災、学校5校が被災(内、2校は海岸から100m以内にあるため、廃校になった)。

根拠(ハンバントタ県知事府)
【国際機関・援助団体対応状況】

ハンバントタ県への支援活動の調整を支援している。
国際機関:UNDP、UNICEF、WFP
国際NGO:World Vision、CCF、Care、Plan、ADRA、赤十字、OXFAM、FORUT、その他
現地NGO:セワランカ、サルボダヤ、その他
ハンバントタ県庁(District Secretariat)レベルでUNを含めた各援助機関と関連政府機関との連絡調整会合が分野ごと(livelihood, psycho social, housing, fishery, environment, water and sanitation 等)に定期的に行われている。

根拠(ハンバントタ県知事府)
事業概要

事業目的:

2004年12月に発生したスマトラ島沖地震による津波被害で親族、住居、家財、収入源を失い、精神的ダメージを受けたハンバントタ県の住民に対して、1)職業訓練/収入創出支援活動 2)児童スポーツ活動、3)カウンセリング活動を通して被災コミュニティーの生活再建支援を行う。
被災者が職業訓練を通して、生活再建に役立つ技術を学び、ものづくりをとおして、収入創出へつなげることを目指す。また自ら行動し、物を作ることによって達成感を得、復興するために必要な自信と前向きな力の回復をめざす。職業訓練活動と並行して、カウンセリングを行うことで、被災者同士で互いの経験を共有し、仲間意識を強め、今後の困難に立ち向かう際に、互いに支えあえるグループ作りを促す。
JENはJPFの助成により、4月6日より生活改善支援事業をハンバントタ県で行い、被災コミュニティーで高い評価を得ている。本事業は、この生活改善支援事業での経験、ノウハウ、ネットワークを元に、前事業を通して確認したハンバントタ県住民の本事業に対するニーズの高さに応えることを目的としている。

事業概要

1.現地事情

津波発生より半年が経過し、ハンバントタ県では大部分の被災住民が避難所から仮設住宅へと移動した。また、津波の被害で住居を失った被災者へ恒久住宅建設のための土地割り当てが政府によって決定し、建設工事が始まっている。また、政府は被災した住民に対し、津波発生後、世帯ごとに月2,500Rsの見舞金を供与すると共に、米、砂糖、ダールの食糧の定期配給を行っている。
住宅、食料への支援ニーズが徐々に満たされつつある一方、津波により職を失った多くの被災民は、いまだ生計復興のめどがたたず、収入源が絶たれた状態にある。ハンバントタでは多くの住民が漁業、農業に従事していた。漁業に従事していた世帯は、漁に必要な漁具(ボート、魚網など)を失ったため、漁を再開できず、魚製品の加工を担っていた妻を含め、世帯全体で収入のない状態が続いている。また、農業に従事していた住民は、農地の津波浸水による塩害により、農作物が育たなくなるといった被害を受けている。このように、生計手段に影響を受けた被災住民は、生計復興の目処がたたないため、経済手段を外からの援助に依存せざるを得ない状態にある。
職を失い、することがない状態に長くおかれている住民は、喪失感、無力感を覚えると同時に、今後の生活に対する経済不安にかられている。津波で家族、家財を失った精神的ダメージだけでなく、将来への生活不安によりストレスレベルがあがり、生活再建に必要な前向きな気持ちを取り戻すのが難しい状況におかれている。

2.事業内容・実施方法

JENは4月6日から8月5日までにハンバントタ県10の被災コミュニティーで「生活改善支援事業」を完了した。事業地でのモニタリング、被災コミュニティーでの聞き取り調査を通して、現行の職業訓練活動のうち、特に「魚網作り」活動が生活復興支援としてニーズが高く、被災者の間で好評であることがわかっている。これは、この活動が1ヶ月という短期間の間に技術を身につけることができ、被災民の生活再建、収入創出に結びつけることができるためである。また、グループ作業により活動を行うため仲間意識が強まり、連帯により、お互いに心を開き、津波の辛い記憶を共有し、前向きな気持ちを取り戻すことができることも、活動が支持されている理由の1つである。
こうした経験、ノウハウをもとに、1)「魚網作り」の職業訓練活動、2)カウンセリング活動を含めた生活再建事業を、ハンバントタ県の6の被災コミュニティーにて実施する。過去の事業同様に、被災コミュニティーの委員会を通して、被災者の中でも特に苦しい生活を余儀なくされている人々を裨益者として特定し、公平性の確保に努める。

I. 職業訓練/収入創出活動

コミュニティーのニーズに合わせ、魚網作りの職業訓練を6のコミュニティーで行う(活動詳細は下を参照)。講習はコミュニティーごとに、午前クラス、午後クラスの一日2回に分けて行う。訓練は時期を前、中、後の3期に分け、それぞれ2のコミュニティーで4週間ずつ行う。各期の間に1週間の準備期間を設け、また後期終了後3週間程度のモニタリングを実施する。(詳細は“事業スケジュール”参照)

1.魚網作り 15名/クラス X 2クラス(午前、午後)X 6コミュニティー=180名

ハンバントタ県で被害を受けた多くの被災者が漁業に従事していた。彼らは津波の被害により、漁具(ボート、魚網)を失い、無収入の上、することのない状態が続いている。こうした被災した漁民を対象に、魚網作りの講習を行う。出来上がった魚網を配布するのでなく、魚網の材料を配り、講習、グループ作業を通して参加者は魚網作りの技術を学び、コミュニティーでの連帯を強めることができる。また、魚網作りの技術のみならず、新しい漁の手法、理論を学ぶことで、漁業を再開した際、漁の効率性を高めることが期待できる。トレーニングでは、各村のニーズに合わせて活用頻度の高い網を最初の10日間で学び、練習用の網を完成させた後、個人用の網の材料から、同じグループ作業で各人の魚網を作成する。講習を通して作成した網は、事業後受益者に供与され、受益者は漁業を再開するのに役立てることができる。
また、前回事業では受益者の間から魚網作りだけでなく、サテライトナビゲーションシステム、ボートエンジンの維持等についての講習も受けたいという要望があがっていた。各村のニーズを元に、専門知識、豊富なトレーニング経験を持つインストラクターにより、その他の漁業に関する講習もあわせて行う。
「魚網作り」活動には専門のインストラクター(各コミュニティー1名)が技術指導を行う。コミュニティー内にある委員会は、被災者の中でも特に厳しい状況にあり、新しい技術の習得を通して生活再建を目指す人を裨益者として特定する。被災者は職業訓練を通して、新しい技術を学び、生活に必要な物を自分で作り出すことで、達成感を得、自信と前向きな力を回復する。新しく学んだ技術は、裨益者が生活を立て直す上でも役に立つものであり、収入創出に結びつき、被災住民の生活向上を図るのに効果的である。
「魚網作り」は、漁業に従事していた成人漁師を対象に行い、若者から高齢者まで参加することができる。活動を行うスペースについては、コミュニティーにある、コミュニティーセンター、寺など受益者が集まりやすいスペースで行う予定である。

II.カウンセリング

I.の職業訓練活動に、ソーシャルワーカーまたはカウンセラーを各コミュニティー1名ずつ派遣し、活動に参加する裨益者を対象にカウンセリングを行う。カウンセリング活動には、現行事業と継続し、Sri Lanka Association of Professional Social Workerの専門家をJENの心理学アドバイザーとして雇用し、カウンセリングに関する総合的なアドバイスを受ける。ソーシャルワーカーまたはカウンセラーは受益者と密に接し、受益者が抱える津波による精神的ダメージ、将来への不安等の悩みを聞き、アドバイスを与える。また、心理学専門家が定期的に事業地を訪れ、マスカウンセリング(アートセラピー、ロールプレイ、などを通したセラピー)や、個別ケースについてのカウンセリングを行う。カウンセリングは、津波の被害や失ったものに対する悲しみを参加者が他の被災者と共に語り合い、共有し、前向きな気持ちを取り戻すための一助となる。現行事業で得たノウハウ、経験と心理学専門家、ソーシャルワーカーまたはカウンセラーの助言をもとに、スリランカの文化、地域性に十分配慮し、現地の人々に合った効果的な形態でのカウンセリングを計画、実施する。

【最終裨益者見込数:180人(人/日 ×153日(事業実施期間))

  事業期間 2005年8月15日〜2006年1月15日(153日間)
裨益者計 180人/153日 ※裨益者/最大執行人役(人日単位)〜( 180/4.2=42.86人/人 )
事業費(直接経費)/最大執行人役(人日単位)〜
( 1,040,100円/4.2=247,643円/人 )
事業内容 地域名 計画数値 裨益者 事業費
ハンバントタ県 魚網作り 180人 687,780円
カウンセリング *180人 352,320円
* 裨益者は"魚網作り"の裨益者と重複。         合計 1,040,100円
執行体制状況

(1)現地での執行体制

現地では、2名の国際スタッフ(プログラム・マネージャー、ファイナンス・オフィサー)が事業全体を監督する。国際スタッフのプログラム・マネージャーが事業全体を統括し、執行管理も含め事業の運営に関する権限を負う。プログラム・マネージャーは事業全ての段階において現場ハンバントタを拠点とするプロジェクト・オフィサーから密に報告を受け、定期的に現場に赴き、フィールドで事業のモニタリングをおこなう。更に、必要に応じて受益者を含む関係者と事業の進捗を確認し、把握する。事業を実施するにあたって、カウンセリングパートを担当するSLAPSWと情報交換や、人材の紹介、現場でのアドバイスなどの協力を得るが、JENのリーダシップの下で事業の調整を行う(詳しくは添付の組織図を参照)。
またCHA(Consortium of Humanitarian Agencies)のPsychosocial Coordinationのワーキング・グループへの参加を通して、他団体と情報交換すると共に、事業の重複がないよう連絡調整を行う。また、ハンバントタレベルでもGA(地方行政府)が主催し、UNICEF、UNDP、その他NGO団体が参加するPsycho-social coordination の定期meetingへの参加し、ハンバントタで心理社会プロジェクトを行う他団体、政府機関との連絡を密にとり、連携調整を行う。
当該事業は外務省NGO支援無償とのマッチングで実施される。総事業費は約¥13,500,000、その内訳は(1)JPF資金¥5,000,000、(2)自己資金他¥8,500,000となっている。事業全体の直間接費比率は、直接費約37%、人件費33%(直接費約¥5,030,000、人件費約¥4,500,000。直接費にソーシャルワーカー、心理学専門家、インストラクター等含む)であり、ソフト事業でありながら直接費の割合を最大限高めるよう計画している。
当該事業はコロンボ・ハンバントタの2事務所体制で実施される。コロンボに事務所を構えることは、事業パートナー・行政機関との密な連絡や情報交換により、移り変わるニーズ・政経情勢により的確に応えていくために不可欠である。MOFA、SLAPSW、ココナッツ開発局などと、コロンボにて月4回以上の会議を予定している。仮にハンバントタから片道7時間の行程を往復し、参加することを考えると、スタッフ増員・滞在費・移動費増額の必要性が出、申請・報告の遅延にもつながり、また人材への過剰な負担を強いることにもなるため、経済的・人的リソースの浪費につながると判断、コロンボ事務所経費の一部(30%)のみを申請した。

(2)国外連携先との具体的な連携

今回の事業を実施する上で、スリランカに充分な人材とリソースがあると判断されるため、できる限りスリランカで既存のものを活用して事業を実施する。

    人役計 従事業務 事業費(人件費)
本部人役(東京) 0.35人役 プログラム・オフィサー 437,500円
現地人役計 4.2人役 385,000円
  国際スタッフ人役 0.2人役 プロジェクト・マネージャー、ファイナンス・オフィサー 385,000円
現地雇用人役 4人役 インストラクター、ソーシャルワーカー(*直接費に計上) *0円
合   計   822,500円
国外連携先 団体名称 連携状況
  NGO セワランカ
サルボダヤ
現場の情報提供、人材紹介、事業調整
現地行政府 ハンバントタ県知事府 知事府からの情報や要請を元に、事業対象村を選定
Sri Lanka Association of Professional Social Workers(SLAPSW) 現行事業と継続して、SLAPSWと、カウンセリングの計画、実施、ソーシャルワーカー等人材確保の分野で密な協力関係を持続する。SLPASWは政府機関、国際機関(UNFPA,WHO等)との協働によるカウンセリング、Community-based development、Rural Women and Child Developmentのプロジェクト経験が豊富であり、彼らとの緊密な協力関係を通して、SLPASWの持つネットワーク、ノウハウを、最大限本事業に活用する。
Coconut Development Authority 職業訓練の「ココナッツ関連製品作り」活動において、ココナッツ関連製品の技術向上、促進を目指す政府機関のCoconut Development Authority(ココナッツ開発局)と協力関係を築き、ココナッツ関連製品のトレーニング技術、投入機械についての最新知識、情報を確保する。また、トレーニングから製品の販売、収入へ結びつける過程でマーケティングを含む情報、人材の紹介を受け、講習を行う上で専門家の派遣を行う。
国際機関 UNDP 知事府への支援も行うUNDPより全体状況を把握する
総事業費 5,000,000円 財源状況(JPF財源:5,000,000円)
事業スケジュール
  魚網作り スポーツ活動を通した
カウンセリング
事業全体準備
(3週間)
事業実施の準備:人材採用、物資調達、事業村選定、委員会設置、受益者選定、道具、材料の配布
第1フェーズ
(4週間)
事業村(1)(2)
活動と講習、指導を通したケア
事業村(1)(2)
スポーツ活動を通したカウンセリング
準備期間
(1週間)
第2フェーズ準備:物資調達、委員会設置、受益者選定、材料配布 第2フェーズ準備:物資調達、委員会設置、受益者選定、材料配布
第2フェーズ
(4週間)
事業村(3)(4)
同上
事業村(3)(4)
同上
準備期間
(1週間)
第3フェーズ準備:物資調達、委員会設置、受益者選定、材料配布 第3フェーズ準備:物資調達、委員会設置、受益者選定、材料配布
第3フェーズ
(4週間)
事業村(5)(6)
同上
事業村(5)(6)
同上
事後モニタリング
(3週間)
事業全体の事後モニタリング、評価