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CONTENTS

目次

第1章

第2章

第3章

第4章

第5章

第6章

実施項目一覧

▼添付資料一覧
第1回ワークショップ概要
第1回ワークショップ議事録
NGOヒアリング内容議事録
     JEN
     AAR Japan
     WVJ
     NICCO、JAFS、JIRD
第2回ワークショップ概要
第2回ワークショップ議事録
ステークホルダー・ヒアリング内容議事録

調査報告書

戦略的アカウンタビリティのフレームワークを用いての
アカウンタビリティ・システムの構築を目指して
−ジャパン・プラットフォームの事例−

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第6章 結論

第1節 全体要約

 本調査では、スマトラ沖地震時に、JPF資金を活用して緊急支援活動に参加したNGOを主対象に、NGOのJPFアカウンタビリティに対する認識、JPFアカウンタビリティの課題を把握することにより、戦略性に富んだアカウンタビリティ・システムの構築を目指した。
NGO側の意識としてまず挙げられるのが、支援対象である受益者を最重要ステークホルダーと捉えることである。これはNGOの活動目的を考えれば、当然の意識とも言えるが、アカウンタビリティという観点においては、他のステークホルダーも含め、バランスよく対応されることが望ましい。たとえばビジネス界では、顧客、投資家、社員、取引先、地域・NPOなど、自社を取り巻く多くのステークホルダーに、それぞれ適切に対応することが求められている。
また、実質的な活動資金を提供する外務省や経済界との関係性と、その他のステークホルダーとの関係性の強弱には大きな隔たりがあることも認識された。JPFという組織の設立目的が、緊急支援時の初動資金を効果的に供給することにあったため、この事実は止むを得ない部分があるが、今後、JPFおよびJPF参加NGOが長期にわたって発展していくためにも、ドナー以外のステークホルダーとの関係強化は重要と言える。
 一方、事業報告書に計画と結果の整合性ばかりを盛り込むのではなく、支援事業の成果(インパクト)や失敗例を積極的に盛り込むべきというNGO側の意見は、今後、NGOの支援活動を発展させるための大きな布石となるに違いない。
 JPFアカウンタビリティの課題としては、プロジェクト・ベースで行われるJPFの支援特性のために、ステークホルダーとの継続的な関係維持が難しいことや、JPFが経済界および個人の窓口となる場合が多く、NGOが個別の関係を構築できない点が挙げられた。これらの内容はどちらもJPFの構造的な問題でもあるので、長期的な視点に立って改善されることが望まれる。重要なのは、資金獲得やパブリシティなどの面で、JPFとJPF参加NGOが競合するのではなく、相乗効果を発揮できるような仕組みを構築することである。


第2節 今後に向けた展望

 日本社会のNPO/NGOに対する関心が高まり、JPFが企業をはじめ多くのステークホルダーとの関係性を深めていく中で、今後、NGOに対するより高度なアカウンタビリティ活動が要求されるであろう。  本調査では、複数のNGO、そして、種々のステークホルダーを抱える組織であるJPFだからこそ可能なケース・スタディを通じて、戦略的アカウンタビリティ・システムの構築を模索した点で意義があったと言える。
 たとえば、本調査を通じて、主要ドナー以外のステークホルダーとの関係作りの重要性が浮き彫りになった。JPF設立時以来の、緊急支援に特化するという目的のために、アカウンタビリティ活動においても近視眼的な発想に終始する側面があったが、今回まとめられたアクションプランを見る限り、より多くのステークホルダーとの関係構築を通じて、長期的な視野にもとづいた戦略作りが行われている。  また、ワークショップやヒアリングを通じて、団体の歴史、規模、事業内容など、多くの面で異なるNGOを並行的に調査することにより、認知向上が必要なレベルから各ステークホルダーに対する明確な戦略を描けているレベルまで、様々なNGOの実状を把握することができた。この結果は、今後、各ステージに応じたNGOの戦略的アカウンタビリティを論じる上での一助となるに違いない。
 本調査の最終結果として、戦略的アカウンタビリティ・システム構築のためのアクションプランが策定されたが、単なる計画に留まらず、ワーキング・グループという実働への道筋が示されたことは大きな成果言えるだろう。
 今後、各ワーキング・グループが実働に向けた議論を進める予定だが、その際は、先進的な海外の事例も研究し、JPFを通じた戦略的アカウンタビリティ・システムの構築が、日本におけるモデルケースとなることが強く望まれる。
本調査の最後に行われたステークホルダー・インタビューでは、会計を含めた支援活動効果の情報発信やメディアを活用した一般の人々への積極的なアプローチなど、広く一般社会との関係を構築するべきとの指摘があった。
JPF参加NGOの中にも、支援の効果測定などを通じて成果重視の情報発信を求める声が多かった。しかし、成果を重視するということは、現地での支援活動および国内での広報・管理業務がより詳細に評価されるなど、NGOが新たなより厳しい評価基準に晒されることを意味する。
NGOがこの評価基準に耐え、より透明性の高い情報を提供する(より高度なアカウンタビリティを果たす)ことにより、ステークホルダーとの関係強化を促進し、それを各NGOの組織力強化につなげ、最終的により効果的な支援活動を実現するようになったとき、戦略的アカウンタビリティ・システムの構築は果たせたと言えるだろう。


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