「避難民はどんな生活をしているの?」
皆さまからお寄せいただいたご質問への回答
~JPF「もっと知ろう!ミャンマー避難民」セミナーから~

避難民キャンプの一角 ©JPF

ミャンマー避難民について

何人くらいの避難民の方がミャンマーから避難しているのでしょうか。

国連の報告(OCHA, Rohingya Refugee Crisis)によると、2022年10月時点で約94万人の避難民が、主にバングラデシュ南東部のコックスバザール県に避難し、34のキャンプや居住地で暮らしています。

バングラデシュは貧しい国のひとつですが、なぜ避難民の受入れが可能なのでしょうか。他の国には避難していないのでしょうか。(回答:JPF井出)

地理的な要因から多くのミャンマー避難民は隣国のバングラデシュに避難していますが、バングラデシュ政府 (以下「政府」)は、ミャンマー避難民の受入れを正式に承認していません。2017年の大量の避難民流入から5年が経過し、キャンプ内ではインフラも整備され、避難民の生活も根が生えつつありますが、政府は彼らの「定住」ではなく「帰還」または「第三国定住」 を奨励しています。
その理由は、バングラデシュの自国民も大変貧しいなか生活しており、避難民の流入により、厳しい経済状況にあったホストコミュニティ※1がさらに厳しい状況に置かれている現状があるからです。「なぜ 避難民を受け入れなければならないのか。政府はもっと国内問題に目を向けてほしい」などの声も上がっており、2023年に統一選挙を控えている政府にとって無視できない事情があります。
そのため、政府はミャンマー避難民キャンプで支援を行うNGOには、支援額の25~30%をホストコミュニティの支援にあてるよう義務付けています。JPFにおいても、避難民とバングラデシュのホストコミュニティ双方が受益する支援を展開しています。
(※1)ホストコミュニティ:ミャンマー避難民が避難してくる以前から、テクナフ郡など現在キャンプがある地域に住んでいたバングラデシュ人の方、その地域のことを指します。

なぜロヒンギャという 言葉 を使わないのでしょうか。

JPFでは、ミャンマー連邦共和国のラカイン州北西部に住むイスラム系少数民族の民族的背景および避難されている方々の多様性に配慮し、ミャンマーからバングラデシュに避難・強制移住させられた人々を「ロヒンギャ」ではなく「ミャンマー避難民」または単に「避難民」と表現 しています。

避難民キャンプでの暮らしについて

難民キャンプに暮らす人は、毎日どんな食事をとっているのでしょうか。(回答:PWJ土井)

難民キャンプ内では世界食糧計画(WFP)が支援を行っており、 避難民の各世帯に「Eバウチャー」と呼ばれるクーポンが配布されて毎月一定金額が振り込まれています。それを利用し、WFPが設置している「アウトレット」と呼ばれるマーケットで野菜や魚・肉などの生鮮食品を購入できるようになっています。
一方、WFPの支援だけでは家族全員分の食事は足りませんので、キャンプ内では、各世帯の敷地や屋根の上のスペースなどを活用して家庭菜園を行い、不足している食料を補っています。

避難民の子供たちは、中等教育や高等教育など、教育を受けられているのでしょうか。また、キャンプ内の学校に通っているのか、それともバングラデシュ現地の学校でしょうか。(回答:SCJ田部井)

ミャンマー避難民の子どもたちは、いわゆるバングラデシュの公立学校には通うことができません。一方で、まったく教育が受けられないという状況を打破するためにさまざまな試みがなされています。キャンプ内では、宗教的な学校(イスラム学校)、NGOやユニセフなどの支援団体が実施している学習センター、コミュニティに根付いた形の主に3つの教育のタイプがあります。
バングラデシュでは1~5年生が小学校、6~10年生が高校という区切りになっており、この高校が、いわゆる日本の中等教育にあたると思います。小学校に関しては、なるべく多くの子どもに教育の機会が与えられるようにどの団体も努力していますが、中等教育、特に女性の中等教育については 多くの課題が残っていると感じています。

避難民の大人たちは、キャンプの中や外で仕事に就くことができるのでしょうか。(回答:PWJ土井)

避難民の方は自由に好きな仕事に就くことは難しく、フォーマルな形で仕事をしている方とインフォーマルな形で収入を得ている方がいます。
フォーマルな形ですと、例えば NGO関係のボランティアや、避難民を雇用して賃金を支払い、自立を支援する「キャッシュ・フォー・ワーク」によって人道支援関係者と一緒に活動し、収入を得ています。インフォーマルな形では、例えばキャンプの外での日雇い労働や、山の奥で薪や草などを運んで日銭を稼いでいる方もいます。

ミャンマー避難民の文化的な問題により、男性よりも女性が困難を強いられるようなことはありますか。改善に向けた取り組みやサポートはあるのでしょうか。(回答:PWJ土井)

ミャンマー避難民の文化的な背景から、キャンプ内でも女性の立場は非常に弱いということを、保健分野の支援活動を通じて感じています。意思決定に際して女性が関われないことも多く、また、避難生活が始まって5年が経過し、先行きが見えない不安やストレスが 家庭内暴力や性暴力に繋がっていることも確認されています。
この現状をどのように改善していくかは難しいのですが、女性だけではなく、男性、特に宗教指導者や「マジ(ベンガル語で船頭)」と呼ばれるキャンプ内のリーダーも一緒に巻き込みながら改善に向けた取り組みをしていくことが重要なのではないかと思います。

支援活動について

さまざまな支援が不足していると思いますが、どのような支援が一番重要で、避難民の本質的な支援になると考えていますか。また、支援の限界を感じたエピソードはありますか。(回答:SCJ田部井)

すべての支援が相互に関係し合っており、ひとつの支援をすればすぐにその課題が解決するということはないため、どの支援が一番必要かを回答するのはなかなか難しいところです。
例えば教育支援の場合、教育の支援だけをすれば教育が行き届くようになるのではなく、まず学校の建物やトイレ、そして学校へ通うための道路も必要です。また、子どもが早婚したり、児童労働に従事している場合には、そもそも学校に通うことができないので、そのような問題から改善していかなければなりません。そのため、すべての課題は並行して包括的に進めていくのが望ましいと思っています。
ただ、ニーズは大きくなる一方で、資金や労力・キャパシティには限りがあり、すべての支援を実施することは難しいという点に限界を感じています。

現地での支援活動においてコロナウイルスの影響はありますか。また、どのような対策を行っているのでしょうか。

新型コロナウイルスの流行当初は、キャンプ内における感染拡大に伴う活動制限(医療や水衛生、食料配布などの生命に関わる人道支援活動のみが許可)により、支援プログラムや内容、支援団体のキャンプへの入域が大幅に制限されていました。2021年9月以降は、感染拡大がピークを越えたことやキャンプ内のワクチン接種率が上がったことから、支援活動は戻りつつありますが、依然として避難民に十分な支援を届けるのが困難な状況にあります。
PWJが実施する保健医療サービス支援事業では、新型コロナのワクチン接種にも対応し、コロナ以降は、待合室のベンチでは混み合わないよう工夫をし、診療所内での感染にも留意をしています。

さまざまな団体がある中で、支援活動の方向性はどのように決めていくのでしょうか。(回答:JPF井出)

JPFでは、加盟しているNGOと議論を重ねながら支援の方向を決めています。具体的には、支援プログラムに参加しているNGO団体とワーキンググループを形成し、その中で今後の支援の在り方や方向性などを議論し、情報共有し合っています。

ミャンマー避難民の問題について、今後の支援の方向性を教えてください。(回答:JPF井出)

バングラデシュ政府(以下「政府」)は、「 ミャンマー避難民の問題は国際社会全体で取り組んでいくべき問題」という態度を崩していません。仮に、政府が「ミャンマー避難民を受け入れる」と表明すると、国際社会の支援がなくなってしまうのではとの懸念もあるからです。政府は、国際社会に対して「忘れないで」というメッセージを送り続け、国際社会に支援と避難民受入れに関する負担の分担も呼び掛けています。
また、政府は、キャンプで暮らしている約100万人のミャンマー避難民のうち、約10%にあたる10万人を、もともとは無人島のバサンチャール島への移住を奨励しています。実際に、バングラデシュの海軍が既に住居棟を設置し始めています。
このような移住の計画も進んでいく中、今後も、子どもや女性、高齢者や障がい者など、より一層弱い立場に置かれている人々へどのように効果的に支援を届けていけるかを考え、避難民やホストコミュニティが自立できる力が身につくように支援を実施していきます。

現地の避難民の方は、日本からの支援が届いていることを知っているのでしょうか。支援団体に対してどのような思いを持っているのでしょうか。(回答:JPF井出)

支援団体によって 建設されたキャンプ内の建物や施設などには、その支援団体のロゴや旗幕が貼られています。日本から支援が届けられていることや、団体の名前を知っている避難民の方は多いかと思います。

政府ODAは、きちんと支援を必要としている人のところに届いているのでしょうか。

JPFが政府からのODAと皆さまからいただいた寄付をもとに実施している本プログラムでは、ミャンマー避難民やホストコミュニティの中でも、特に脆弱性の高い層へ支援を届けています。
高齢者や障がい者に加え、避難生活の長期化や新型コロナウイルスに起因する心理的ストレスの増大などによって女性や子どもの保護の必要性が高まっていることから、避難民の伝統的価値観・文化を尊重しつつ、ジェンダーの観点から脆弱な層への支援を優先しています。
*本プログラムの対応計画はこちらをご覧ください。

私たちができること

ミャンマー避難民が生活しているキャンプで実際にボランティアなどをしたり、避難民の方と接することはできますか。ボランティアのほかに、学生や参加者はどんなことができるでしょうか。(回答:JPF井出)

キャンプへの訪問には厳しい制約があり、一般の方が訪問することは難しい状況ですが、その中でNGOは知恵を絞りながら事業を実施しています。NGOは、出張や現地の様子をSNSで発信したり、セミナーを開催して一人でも多くの方にこの現状を伝えることも使命であると考えています。
皆さまには、ぜひこの問題を忘れずにいること、またご家族やご友人など周りの人たちと話すなど、自分自身の関心事として捉えていただければと思います。この特設ページには、現地で活動するNGOスタッフのインタビューや、現地の子ども、女性、ホストコミュニティの暮らしを映像や画像で掲載しています。ぜひご覧いただき、避難民の方が直面する課題や、リアルな生活の様子を知っていただければと思います。
そして、年々、本プログラムの資金が縮小してきているという厳しい現状があります。帰還の見通しが立たない中でもなんとか希望を見出して暮らしているミャンマー避難民の方が、これからも前に進み続けることができるよう、寄付によるご支援をお願いできればと思っています。

※ いただいたご質問のうち、同様のご質問につきましては集約させていただいておりますことをご了承ください。

関連セミナー

JPFは、2022年11月16日(水)、オンライン・セミナー「もっと知ろう!ミャンマー避難民~バングラデシュに逃れたミャンマー避難民の避難民キャンプでの暮らしの現状と課題~」を開催し、100名以上の方にご参加いただきました。

本セミナーでは「避難民キャンプでの暮らしの現状と課題」に焦点を当て、先行きの見えない中で避難民がどのような生活を送っているのか、5年間の活動を通じて見えてきた課題はどのようなことかを、現地で活動を続ける加盟NGOスタッフおよびJPFスタッフからお話させていただきました。また、参加者の皆さまからのご質問にもお答えし、困難な状況にある避難民の現状について皆さまとともに考える内容となっています。ぜひ、ご視聴ください!

ミャンマー避難民、子どもたち、女性たち、ホストコミュニティ―のため、皆さまのご支援を。

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