NGO能力強化研修プログラム

InterAction Forum スタディツアー 2015

イベントレポート

参加しているJPF加盟NGOスタッフからレポートが届きました。

6/21から10名のNGOメンバーが米国に派遣されます!

ジャパン・プラットフォーム(JPF)は、日本のNGO能力強化研修プログラムの一環として、6月21日から1週間、米国のワシントンD.C.で開催されるInterAction Forumスタディ・ツアーに、日本のNPO/NGOのリーダー、および将来リーダーとなる10名を派遣します。

団結式

これに先立ち、6月9日、J.P.モルガン社屋(東京都千代田区)にて出発前ブリーフィングが行われ、海外の支援地駐在中の3名を除く7名が参加しました。参加者は、同プログラムおよび同ツアーについて説明を一通り受けたあと、ペアになって自己&他己紹介を行いました。また、「本ツアーに参加する理由」「本ツアーを通して期待する学び」「帰国後に自分が果たせる役割」を各々に書き出す時間では活発な意見が交換され、全員が目的と志しを新たにしました。

レポート1「他人事を自分事として考える」に続く

レポート1:他人事を自分事として考える

待ちに待ったInterAction 2015 フォーラムが始まりました。我々、日本からの参加者をはじめ25か国から約1,000人が集うフォーラムです。

レポート1:他人事を自分事として考える

「傲慢な援助」などの著書で有名なW.イースタリー(Wiiliam Easterly)ニューヨーク大学教授による基調講演では、世銀をはじめとする先進諸国の専門家集団による貧困解決策の限界が示され、同時に、過去の植民地問題や人種問題を例に挙げて、アドボカシーの重要性が語られました。加えて、「自らの政府と闘っていく(protest our government)」というメッセージも出されました。

また、InterAction代表のS.ワースシントン氏(Sam Worthington)からは、我々はどのように問題解決に関われるかという問いに対する提案のひとつとして、「自らの政府を変えていく(hold our own government accountable)」ことが挙げられました。このお二方のメッセージは、今の日本社会を考える上でも、非常に印象的でした。

海外にて国際協力を実施するからこそ、まずは自分達の社会を変える必要がある。まさに"他人事を自分事として考える必要がある"、それを改めて考えさせられるフォーラム第一日目でした。

レポート2「問題意識を持って行動に移す」に続く

レポート2:問題意識を持って行動に移す

InterAction 2015フォーラムの2日目はワークショップで一日が始まりました。午前、午後、夕方の3回に分けて、合計26のテーマにおけるワークショップが開催され、各自、興味のあるテーマのワークショップに参加しました。ワークショップはディスカッション形式で進むこともあれば、パネリスト同士のディスカッションを聞きながら、質問等を通して与えられたテーマについて掘り下げていく形で進むこともありました。ワークショップで新しい学びを得たあとは晩餐会に出席し、異なるバックグラウンドを持った方々とお話する機会に恵まれました。

レポート2:問題意識を持って行動に移す

一日を通じて強く感じたことは、それぞれが社会に対して何かしらの問題意識を持っており、実際にその問題を解決するために行動に移しているということです。このフォーラムに参加するのは、時間的にも経済的にも決して簡単なことではありません。それでも「新しい人々とネットワークを作るために参加した」、という目的で参加している人が実に多いことに驚かされました。自分達の創りたい社会を創るために時間とお金を投資している人々と出会い、意見を交わすことができる、InterActionフォーラムはそのような刺激あふれる場です。この場で問題意識を持った多くの人々が出会い、今後どのような化学反応が起きるのか、すごく楽しみであると同時に自分もその一員としてアクションを起こしていこうと、より一層強く思いました。

レポート3「地球規模で考え、足元から行動を起こせ」に続く

レポート3:地球規模で考え、足元から行動を起こせ

刺激に包まれる時間はあっという間で、InterAction2015フォーラムもいよいよ今日が最終日となりました。
午前中、2つのワークショップに参加した後、閉会式に出席しました。ベン・ローズ大統領補佐官(国家安全保障問題・戦略的対話及びスピーチライティング担当)による閉会の挨拶では、「現在ホワイトハウスは、画期的な市民社会のハブを世界中に構築するべく動いています。」と述べられ、さらには、アメリカ合衆国大統領の「市民社会とパートナーを組むこと及び保護することはアメリカのリーダーシップの一環である」という強力なメッセージも紹介されました。

レポート3:実践編

そして締めくくりとなる最後のセッションでは、リンジー・コーテス氏、サラ・E・メンデルソン博士、マイアナ・キアイ氏、ダグラス・ルッツド氏ら4人によるパネルディスカッションが行われました。
本ディスカッションでは、政府が市民社会を抑制しているのと同じくらい、ログフレームが市民社会に対して良くない影響を与えているという主張がありました。つまり、ドナーは資金の提供先である市民組織に対して、声を持たないコントラクターになることを望んでいるということです。次に論点が「市民社会の価値とは何かについて」に移ると、市民社会は西洋の価値観ではなく、普遍的なものであるとの意見が挙げられました。しかしながら実際は、現在90カ国以上でその存在価値が危機にさらされており、市民の声を正しく上げること、また、そのサポートが急務とされています。とはいえ、市民社会は1000マイルも離れた場所に住む誰かによって守られるものではありません。市民社会を脅かすものに対しては、何度でも諦めずに挑むことが求められます。市民社会は自分の隣人から始まるものであり、とても身近なものであるという一言に尽きるのです。このような議論を聞きながら、「地球規模で考え、足元から行動を起こせ」という格言を思い出しました。

レポート4「FEMAとNGOの協働は災害対応の必須条件」に続く

レポート4:FEMAとNGOの協働は災害対応の必須条件

スタディツアー前半3日間(6月22~24日)のInterAction2015フォーラムが終わり、米国の人道支援団体・機関を訪問する後半スケジュールが始まりました。

レポート4:FEMAとNGOの協働は災害対応の必須条件

4日目の25日、私たち一行は午後にFEMA(アメリカ合衆国緊急事態管理庁)を訪問して、アレックス・アンパロ氏から、お話を伺いました。FEMAは災害支援を行うNGOを「パートナー」として位置付けています。お互いに「パートナー」として協働する上で必要とされることは、オープンな関係性です。「このような関係を構築するためには、平時においてもこまめな対話を継続し、信頼を築くことがとても大切だ」との彼の言葉が印象的でした。アメリカでは国内で大規模な災害が発生した際、FEMAを中心として、政府、NGO、プライベートセクターなどがそれぞれの専門性を認識した上で協力や調整を行い、災害に対応します。FEMAとNGOによる日頃の関係性が、効果的かつ敏速な被災者の救済活動を可能にさせていることを学びました。

レポート5「US-Japan Councilとの会食にて」に続く

レポート5:US-Japan Councilとの会食にて

6月25日の夜、私たち一行は、JPFの「NGO能力強化研修プログラム」のドナー組織であり、同プログラムを包括する「TOMODACHIイニシアチブ」の主催者、US-Japan Council(米日カウンシル)の皆様との夕食会に出席してきました。

レポート5:US-Japan Councilとの会食にて

US-Japan Councilからは、昔、ブラジルへ移民された日系3世の方や、日本に興味を持ったことをきっかけに日米の文化交流の架け橋となる事業を実施されている方々が参加されており、彼らの歴史や事業など、興味深い話を聞くことができました。また、彼らは日本のNGOの事業内容にも強い興味をもっており、JPF加盟NGOそれぞれを代表する私たちひとりひとりは、各々の所属組織をアピールすることができたように思います。とりわけ、東日本大震災については皆様の復興支援への想いが強く、災害時における被災者の選定作業が伴う困難性などにおいて、活発な質問や意見交換がされました。
特筆すべきは、本プログラムをサポートしている彼らにとって最大の関心事項は、私たちがこのスタディツアーで何を学び、何を得たのかという点であり、改めて自分たちがこの機会に参加している意義や、日本に持ち帰って活かすべきもの、日本のNGOの成長を応援する人々がいることを再認識させられました。
このような熱いエールに恵まれた私たちは、日米の懸け橋、また、日本のNGO能力向上の一助になるべく、努め続けようと気持ちを新たにしました。

レポート6「OFDA訪問」に続く

レポート6:OFDA訪問

後半スケジュール2日目の26日は、アメリカ政府の建物で2番目の規模を誇るロナルド・レーガンビルに入るアメリカ合衆国国際開発庁(USAID)の国外災害支援を担当する部署、OFDAを訪問しました。日本には、まったく同じ組織は存在しません。米国政府内のコーディネーション、ニーズ確定、優先順位の設定を行う機能を担い、それら情報に基づき各活動に資金提供を行います。災害の規模によっては、DARTsと呼ばれる災害支援対応チームが現地に派遣され、被災地での対応を補完します。また、難民及び食料支援はOFDAとは別の局が担当します。

レポート5:OFDA訪問

私たち一行の中には、USAIDの支援を受けて活動した団体からの参加者もいました。彼らも含め、USAIDと初めて接する私たち全員にとって、実際の緊急支援のオペレーションを担当している方から話を聞くことは、大変刺激的でした。また、今後のパートナーシップや緊急対応に役立つ情報を伺うことができて、有意義でした。
緊急支援を担当する米国OFDAと日本政府のファンドとの大きな違いは、各援助機関に対する拠出額の割合です。OFDAが最も多く支援金を拠出しているのはなんと、国連やその他の国際機関ではなくNGOというから驚きです。ほかにも、スピードを重視したファンドの柔軟性や現場事務所の裁量、関係省庁との連携という点でも日本政府のそれと性質が異なるということは大きな発見でした。また、OFDAのミッションに基づき、支援を届けるまでの流れがスリム化されており、クリアなミッションにより形作られた、“あるべき”支援のモデルが出来上がっている、と感じました。
この訪問を通じて、OFDAのシステムを知るだけでなく、「明確なビジョン・ミッション」により、達成するための活動や手法が設定され、そして成果につながることを改めて認識しました。
最後に、災害対応時のオペレーションセンターを見学しました。言うまでもありませんが、平時であったため、閑散としている事務所でした。

レポート7「InterAction事務局訪問」に続く

レポート7:InterAction事務局訪問

6月26日の午後は、米国最大のネットワーク組織であるInterAction(以下「IA」)の事務局を訪問し、約3時間弱にわたって、CEOのSamuel Worthington氏、アドボカシー活動責任者のJohn Ruthrauff氏、セキュリティ責任者のBasile Pissalidis氏から話を伺いました。

レポート7:InterAction事務局訪問

まず、Worthington氏からは加盟NGOが参加しているワーキンググループの数やIAの資金源(加盟NGOおよび政府からの出資率)等、IAの組織全般について説明を受けました。また、IAはワーキンググループにおいて各NGOをサポートし、各自がプレゼンスを高め、自己の能力を引き上げられるような活動を行なっているという話から、IAがcontrollerではなく、新たな議論を生み出すための場を創出・提供するという役割を担っていることを理解しました。

続いて、Ruthrauff氏からはIAのアドボカシー活動が紹介されました(政府予算の作成段階から問題提起を行うこと、集中すべき活動項目に対する予算の積み上げ請求、協力的な議員への積極的なアプローチ等)。企業のCEO等に対する働きかけについて私たち参加者から質問が挙がると、広く大きくではなく、小規模なグループでアプローチを進め、徐々に影響力を高めていく着実な活動が肝要である、と話されました。

最後に、Pissalidis氏からは、近年の世界各地における治安の悪化を受け、フィールドの実情に即したリスク評価の重要性や、セキュリティ計画のガイドラインをIAが用意し、計画を立案できていない加盟NGOに対してはワークショップやミーティングを通じてそれを促しているという話がありました。考えさせられたのは、「セキュリティは担当職員だけでなく、加盟NGOのすべての職員が理解し、習得しておくべき」との指摘です。自団体を顧みた際、その重要性を頭では理解しているものの必ずしも実践できていないと痛感し、自団体ならびに日本のNGO全体が取り組むべき喫緊の課題が見えました。

レポート8「Capitol Hillツアー」に続く

レポート8:Capitol Hillツアー

InterAction Forum スタディツアー 2015の最終日、26日の午後に、私たちはInterAction事務局を訪問した後、ワシントンDCの中心であるCapitol Hillに行き、米国連邦議会の関係者による特別なツアーに参加しました。

レポート8:Capitol Hillツアー

レポート8:Capitol HillツアーCapitol Hillという場所をご存じない方も多いかもしれませんが、そこは日本の国会議事堂のようなところです。様々な新法案が可決、成立したり、新大統領による意思表明のスピーチが行われるところです。このツアーでは”U.S. Capitol Rotunda"や”Old Senate Chamber”という有名な場所を回り、米国の様々な偉人の銅像等も見ることができました。市民社会の発展と共に紡がれてきた米国の歴史をこうして学ぶことで、米国のNPO/NGOを取り巻く世界に触れるという目的で過ごしたこの一週間における様々な出会いや発見が熟成するかのようでした。

日本の歴史とアメリカのそれはもちろん、それぞれの市民セクターの強みや不足要素は全く異なるものですが、市民社会の発展を願い行動する人はいつの時代もどこの地にも存在することを改めて知るとともに、必ず成し遂げられるものである、と気持ちを強くすることができました。

レポート9「国内災害対応は、官民の強い信頼と連携から」に続く

レポート9:国内災害対応は、官民の強い信頼と連携から

本ツアー4日目の6月25日、私たち一行はFEMA(アメリカ合衆国緊急事態管理庁)訪問や米日カウンシルとの会食出席以外に、国内災害への対応を行うCSO(市民社会組織)のネットワーク団体である、NVOAD(National Voluntary Organizations Active in Disaster )を訪れました。
(※FEMA訪問や米日カウンシルとの交流についてはレポート4、5をご覧ください。)

レポート9:国内災害対応は、官民の強い信頼と連携から(NVOAD)

場所は中心部にある米国赤十字の事務所です。まず建物に入ってその高い天井、瀟洒な佇まいに圧倒されながら、会議室に案内されました。自己紹介のあと、NVOADの国際委員会議長、エイミー・ミンツ氏(米国赤十字所属)からのご挨拶に続き、スタッフであるジェシカ・ベティンガー氏からNVOADの概要の説明を受けました。また、それ以外の主要メンバーである3団体(ACS、Buddhist Tzu Chi=台湾のCSO・慈済基金会、救世軍)の担当者から、各々の活動およびNVOADとの関わりと有用性について、NVOADの政府側のカウンターパートであるFEMAの職員からはNVOADおよびCSOとの関係について、それぞれコメントがありました。

私がNVOADの説明の中で興味深く思ったのは、NVOADの構成とその広がりです。1970年に7団体からスタートしたNVOADには、現在59のメンバー団体が加盟しており、規模に応じて3段階のメンバーシップにわかれます。ただそれは、あくまで全国(National)レベルの活動であって、実際には州やテリトリーレベルの56のSVOAD、さらにはカウンティや市のレベルのCVOADまで、全国にあまねくネットワークが存在しています。実際の災害が起きるのは現場レベルで、さらに州政府などは日本と比べても独立色が強いため、NVOADのメンバー団体も災害発生時にはそれぞれ拠点のある地域で活動します。そのような中でもNVOADは激甚災害(州知事が連邦政府=FEMAに支援を要請するようなケース)の際に連邦政府と調整する他、各被災地でのCSOのキャパシティビルディングなどを行います。特に興味深いのは、SVOADやCVOADはそれぞれに、地域の特色に応じて団体の有りようも様々で、NVOADがそのすべての上に君臨するわけではない、ということです。恐らく、初めてこの性質や体制を知る人には複雑に映る状況だと思います。

NVOADは常勤のスタッフが2名ということで、米国のCSOネットワークとしては小規模であるようです。そのため全国のVOADのデータを集めているわけではないこと、また、各委員会の多くはメンバー団体の自発的な活動に大部分を負っていることも説明を受けました。ちなみに、NOVADはこのような小さな組織であっても年間予算100万ドルという話を聞き、日米間における「小さい」という概念の違いを改めて感じました。

レポート9:国内災害対応は、官民の強い信頼と連携から(NVOAD)

私たち参加者からは、米国の国内災害における全般的な政府とCSOの連携や協働の関係について強い関心が示され、質問が挙がりました。これに対して、FEMAの方が「CSOには経験と能力があり、限られた政府の資源の中でCSOとの協働は合理的であり、今や不可欠」と回答しましたが、「なぜそんな当たり前のことを?」という雰囲気を漂わせていたことは特に印象的でした。

国の成り立ちから制度に至るまで大きな違いのある日米間ですから、国内災害対応にまつわる諸々の事柄も一概に比較することはできません。しかし、今後の日本の国内災害に対して日本のCSOがさらに活躍しやすい環境を作っていくためには、(一朝一夕にできるものではないが)やはり官民の信頼関係構築、実際の現場でいかにCSOの存在が役立つかを示すこと、能力向上に対する絶え間ない努力、そして、情報発信の必要性を強く感じました。さらには、NVOADのようなCSOを調整する機関(Coordination Body)が存在することで、政府との平時からの情報交換、制度や仕組みに関する政策協議が非常に円滑に進む等、NVOADから示唆いただけることが数多くあると実感しました。

以上のように、今後も日米間での国内災害における連携、経験の共有が非常に有益であることを再認識する訪問になりました。