スマトラ島南西沖地震被災者支援

本支援活動は終了しました。寄付などによる
ご支援をいただき、ありがとうございました。

プログラム概要

スマトラ島南西沖地震被災者支援について

活動地図(PDF 735KB)



2007年9月12日

1.背景

2007年9月12日夕刻(現地時間)にインドネシア・スマトラ島南西沖を震源としてマグニチュード8.4の地震が発生しました。また、翌13日にもマグニチュード7.9の余震があり、多くの家屋や公共建物が被害を受け、2007年9月末日時点での被害は、犠牲者25名、負傷者約160名、損壊倒壊家屋56,000軒となりました。

ジャワ島地震など他の地震と比較して人的被害が少なかったことから、インドネシア政府は海外からの支援を要請する動きを示さず、国連人道問題調整事務所(OCHA)は9月13日に派遣した調査ミッションにより、今回の地震による被害規模は比較的小さく、インドネシア政府による適切な対応が講じられていることから、国連機関としての緊急支援の必要性はないものと結論付けました。しかし、地震発生直後に現地行政によるテントや食糧、生活物資などの被災地への救援物資配給が始まったものの、必要数に対して2~3割程度しか確保できていませんでした。また、発災直後は一部道路の不通が伝えられていましたが、その後復旧し、幹線道路は全て通行可能となりました。発災直後は停電も発生していましたが、その後順次復旧しました。

2.JPFの対応状況

本地震の被害者支援対応において、発生直後の段階では被害状況が十分に把握されていなかったものの、地震の規模に鑑みて大規模な被災の可能性があったため、ジャパン・プラットフォーム(JPF)では被災状況の確認および関係機関への情報発信のため、JPF事務局員1名を地震発生の翌日に現地に派遣しました。

緊急支援として、国境なき子どもたち(KnK)、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)、アジア協会アジア友の会(JAFS)の3団体が事業を実施し、合計77,837,930円が政府支援金より助成されました。

日本国際民間協力会(NICCO)は発災直後に現地入りし、緊急医療支援(モバイルクリニック)および心理社会ケアを実施しました。KnKはチルドレンセンターを開設し、被災によって生じた心の傷を癒すため心理面でのケアを実施しつつ、公的教育支援を行いました。同様に、SCJも被災した子どもたちが早急に安全な環境下で学習活動を再開することができるように学習の場としてテントを設置しました。JAFSは耐震仮設住宅を建設し、耐震技術移転を行い、排水設備などの水インフラの整備を実施しました。

日本人医師と看護師による診察

授業後の学生

設置したテント教室と生徒

完成した家屋の前で記念写真

基礎固めの重要性について話合う

社会的ケアプログラム
クレヨンを使った描画セッション

2007年12月21日

対応計画



2007年9月21日

1.スマトラ島南西沖地震の初動調査

(1)調査実施経緯

2007年9月12日に発生したスマトラ島南西沖地震(マグニチュード8.4)の被災者支援対応において、発生直後の段階では被害状況が完全に把握されていないものの、地震の規模を鑑みて大規模な被災の可能性があったため、被災規模の特定および関係機関への情報発信のため、事務局員1名を地震発生の翌日(9月13日)に派遣した。また、地域研究コンソーシアムの加盟組織と協力して、インドネシア・スマトラ島の地域研究専門家2名と現地で合流し、本被災地域に関する知見に基づく助言および本調査実施にあたっての全面的な協力を受けた。 JPF参加NGOの対応状況としては、2007年9月21日時点でNICCO(特定非営利活動法人日本国際民間協力会)が緊急医療モバイルサービス事業を展開中であり、KnK(特定非営利活動法人国境なき子どもたち)が初動調査計画を申請、SCJ(特定非営利活動法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)が出動を検討している。他の数団体も出動の可能性を団体内部で検討している。



(2)調査の視点
本調査では、以下の視点から現地状況の把握を行った。
   
(1)現地被災状況の調査:
・被災規模の特定と被災地の状況調査
・現地行政(州、県、郡)の対応状況および方針調査
・被災支援のニーズ調査、ロジスティクス調査
・JPF参加NGOおよび他援助機関の動向調査
(2)他機関との連携可能性の調査:
・現地援助調整状況の調査
・現地日本国大使館およびJICAとの連携可能性調査
・現地日本企業との連携可能性調査
本調査結果に基づき、スマトラ島南西沖地震被災者支援プログラムの全体計画および対応方針の案を纏め、常任委員会へ提出することを目的とする。また、併せて本調査結果をJPF参加NGOおよび関係機関へ情報発信することで、今後の支援事業展開に関する可能性の相互理解および他機関との協力促進を図る。
(3)調査派遣者 
山本 博之 地域研究コンソーシアムメンバー 京都大学地域研究統合情報センター准教授
西 芳実 地域研究コンソーシアムメンバー 東京大学大学院総合文化研究科助教
菊池 慎吾 ジャパン・プラットフォーム事務局事業部員

2.調査結果

行政区分:
インドネシア・スマトラ島当該地域の行政区分は
州(Provinsi)>県(Kabupaten)>郡(Kecamatan)>村(Desa/Kam-pung)
州(Provinsi)>市(Kotamadya)>町(Kelurahan)>村(Desa/Kam-pung)
となっている。被災地への救援物資はインドネシア中央政府や州から県や市を通じて各郡に送られている。
被災状況および被災規模:
本地震による被害が大きい地域はベンクル州の2県(北ベンクル県、ムコムコ県)と西スマトラ州の2県(南プシシル県、メンタワイ県)である。北ベンクル県からムコムコ県、南プシシル県までの約400kmの海岸沿いに位置する村落部が広範囲に渡って被害を受けている。メンタワイ県はシベルト島、シポラ島および南北パガイ島の4島からなるメンタワイ諸島を形成しているが、特に地震の震源に近い南北パガイ島2島の被害が大きかった。
 被災地の住民は、家屋が倒壊した住民はもとより半壊や壁に亀裂が発生するなどの軽微な損傷の家屋に住む住民も、余震による倒壊を恐れて各自の庭などにビニールシートで屋根を作った簡易スペースで生活を送っている。10月から雨季に入ることで既に強い降雨があり、夜間は気温が20度ほどに下がるため、下痢の症状増加など野営して生活を送っている住民の健康管理が緊急の課題となっている。緊急に必要な物資としては、(1)テント、(2)食糧、(3)医薬品、(4)生活必需品(衛生用品など)が挙げられている。
現地政府対応状況および方針:
現地行政は州、県、郡の各レベルで対策本部を設置し、被害状況の情報収集および救援物資の配布や関係機関との調整業務を行っている。インドネシア中央政府は今回の地震に対しては海外からの支援を要請する動きは見せていない。ただし、例として西スマトラ州南プシシル県での被害総額の試算である8,000億ルピア(約120億円)は同県の年間予算である5,000億ルピアをはるかに上回り、行政機関のみの対応ではカバーしきれないとの声も多く聞かれた。個人の家屋については、重度以上の損壊家屋については中央政府からの支援を受けられるものの中度以下は地方政府レベル(州および県、市)での対応となり、当該地方行政には今後大きな負担となることが予想される。また、行政によるテントや食糧、生活物資などの被災地への救援物資配給は始まっているが、必要数に対して2~3割程度しか確保できておらず、行政側のキャパシティ不足を裏付けている。
他援助機関対応状況:
国連OCHAは9月13日に派遣した調査ミッションにより、今回の地震による被害規模は比較的小さく、インドネシア政府による適切な対応が講じられていることから、国連機関としての緊急支援の必要性はないものと結論付けた。これと符合して、現地における海外からの援助機関のプレゼンスはほとんどなく、物資配布などに関する援助調整も積極的には行われていない。一方、インドネシア赤十字や現地NGOなどの現地援助機関は物資の配布や情報収集などの活動を開始している。県レベルでは各援助機関の動きを把握できておらず、活動にあたっては郡レベルでの調整が必要となる。
治安状況:
一部で避難民と住民の間の争いが聞かれたが、総じて治安は安定しており、NGOの活動に支障となる状況ではない。軍や警察も非常時の体制をとり、州や県政府との調整のもと何らかの治安悪化に備えている。
インフラの状況:
発災直後は一部道路の不通が伝えられたが、その後復旧し、現時点でベンクル市からパダン市へ向かう幹線道路は全て通行可能である。また、発災直後は停電も発生していたが、調査時点で約8割の世帯に電気が供給され、残りの2割についても順次復旧するということであった。ただし、メンタワイ諸島のインフラ状況については情報が乏しく詳細を把握できていない。
メディア注目度:
今回の地震による死者・けが人などの人的被害が比較的少なかったことから、インドネシア国内でもメディアによる報道は縮小傾向にある。海外のメディアに取り上げられる機会も減り、国際的な支援を働きかける求心力は現状のところ低くとどまっている。
NICCO活動状況:
ムコムコ県の5郡および北ベンクル県の1郡で緊急医療チームによるモバイルクリニックを展開している。活動地域は今回の地震で最も被害を受けた地域の1つであり、多くの診療所が損壊し、また多くの住民が外で避難生活を送っていることから、緊急のニーズに即した支援といえる。
現地大使館および日本企業の対応状況:
在インドネシア日本国大使館としては、インドネシア政府からの支援要請がないことにより、日本政府としての特別な対応は検討していない。JICAは発災翌日にあたる9月13日から14日にかけてJICAジャカルタ事務所から調査団を派遣して情報収集にあたったが、緊急医療の必要性は低いと判断し国際緊急援助隊(JDR)の派遣を見送った。今後は住宅再建にあたっての耐震技術移転などの面で支援の可能性を検討する。現地日本企業の商工会議所であるジャカルタ・ジャパン・クラブ(JJC)は、今回の地震は2004年のスマトラ島沖地震や2006年のジョグジャカルタ地震と比べて被害が小さいことから、特別な対応は検討していない。

3.所見

被災状況の特徴と現地行政の機能:
今回の地震はマグニチュード8.4と規模が大きかったことから、被災地は広範囲に渡っている。その一方で被災地域は都市部ではない村落地域であったこと、地震後に一部で観測された津波も小規模なものであり、津波による被害はほとんど報告されていないこと、被災地は伝統的な建築様式とトタンなどの軽量な屋根による家屋が多く、耐震性の弱いレンガ作りや瓦屋根など重量物が上に載っている家屋が比較的少なかったことなどが、地震規模に比べて被害(特に人的被害)が小さい理由と考えられる。ベンクル州の州都であるベンクル市や西スマトラ州の州都であるパダン市はほぼ無傷であり、県レベルでは北ベンクル県の県庁所在地であるアルガマクムール市は被災しているが、県庁の前の広場に対策本部を設営し情報収集や物資の分配などにあたっている。情報収集と整理、対応協議という点では行政機能は十分機能しているといえる。このため、NGOが活動を開始するにあたっての主要な調整先としては、州の関係部局(教育支援なら教育局、医療支援なら保健局)への活動説明、県対策本部での活動説明と調整依頼、および郡レベルでの実質的な調整が必要となる。
被災地が広範囲なこと、近くに物資を調達できる都市がないことから、ロジスティクスが長距離になることが想定される。物資配布の場合、ベンクル市は大口の物資調達には向かないことから、パダンか、さらに大口はメダン、もしくはジャカルタで購入し、被災地にトラック等で輸送する必要があると考える。メンタワイ諸島へは、さらにパダンから船舶による輸送および被災地での配給にかかわる手配が必要となる。
国際的な支援の必要性とJPF参加NGOの活動可能性:
メディアの注目がさほど集まらず、インドネシア中央政府からの支援要請も無いなかで国際社会からの支援はあまり入ってきていない一方で、被災地の現場ではテントや食糧、医薬品などの物資はかなり不足している状況である。中央政府のスタンスと地方行政府との間には被害の程度と国際援助機関からの支援の必要性に対する認識の点で温度差があり、現場レベルでは緊急支援のニーズは高いと判断する。州政府からの物資配給の絶対数が不足しているため、末端の郡レベルでは必要数を満たさない物資をいかに公平に配給するかで頭を悩ませている。このため、物資配布という観点で活動を実施する場合は迅速な対応が必要となっている。また、中期的には、診療所や教育施設の再建もしくは仮設施設の設置・運営などの活動が今後必要となってくると考えられる。教育支援の一環として、子どもたちの地震に対する恐怖心やトラウマをケアする活動も求められよう。住民や行政の耐震技術に対する関心は高いことから、NICCOがジャワ島地震被災者支援で行ったような耐震技術ワークショップを通じた住民の手による小学校の再建支援などは、今回のスマトラ島南西沖地震においても受益効果が高いと考える。
JPFの対応方針:
現時点では被災地各地で緊急医療支援や救援物資の配給が行われており、並行して実施している被害規模や被害総額の調査結果に基づいて、現地行政が住宅や公共施設の再建を含めた復旧プランを計画することになっているが、いつの時点で復旧プランが設定されるかの見通しはまだ立っておらず、行政からの復旧支援が開始されるまでにはまだまだ時間を要すると予想される。その点を踏まえ、JPF支援プログラムとしては初動対応期間とその後の緊急支援期間として合計6ヶ月間の対応を提案する。現時点で民間からのJPFへの寄付金は全く無い状況であり、6ヶ月後以降の復旧支援フェーズにJPFとして関わることは難しい見通しであるが、耐震技術の移転支援などの事業展開の可能性があるJICAとの連携により日本からの支援の継続性を実現することもJPFの取り組むべき今後の課題になると考える。

4.その他

ジャワ島地震被災者支援評価報告書:
ジャワ島地震被災者支援評価報告書を現地の行政府や大使館、JICA、日本企業に手交したが、簡易版と詳細版に分けて発行したこと、簡易版はカラーで見やすいこと、英語のページを増やしたことなどの理由により大変評判が良かった。評価やモニタリングの手法はもとより、評価報告書の発行形式についても引き続き改善を図っていくことで、「手にとって読んでもらえる」報告書になると考える。
地域研究コンソーシアムとの連携:
今回の初動調査では、地域研究コンソーシアムの加盟組織からスマトラ島の地域研究専門家2名にご同行いただいたが、被災地域の基本的な情報はもちろんのこと、住民や政府関係者の考え方、メンタワイ諸島の関係団体の紹介にいたるまで様々な助言をいただき、本調査遂行のうえで大変有益であった。また、現地政府や被災民との聞き取りやJPFの対応説明にあたっては、言葉の面でも全面的にご協力をいただき調査の迅速性、効率性を考えるうえで非常に大きかった。今後別の国・地域でも、今回のような初動調査をはじめモニタリングや評価報告書作成において、地域研究の専門家と連携・協力することは、調査やモニタリング手法の改善に寄与すると考える。
現地雇用スタッフの重要性:
今回の被災地域はスマトラ島のなかでも開発があまり進んでいない地域であった。当初、被災地に最も近いベンクル市に入ったが、それほど大きい街ではないため、「通訳」という職業は存在せず、また、英語の話せる運転手を確保することすら困難であった。一方、被災地域や地方行政府では英語が通じることは稀であり、地域研究の専門家と合流できていなければ、今回の初動調査は困難なものとなっていただろうと想像される。もともとインドネシアに拠点を置いているNGOやアライアンスなどの連携団体があるNGOと異なり、基本的に現地にコネクションを有していないJPF事務局が発災直後に人員を派遣する際は、首都で現地雇用スタッフを確保してから共に現地に向かうなどの人材確保の方策を講じる必要があると考える。ただし、NGOや国際協力分野での業務経験のない「普通の通訳」では、JPFの団体説明などの込み入った話を相手に理解できるように訳することができるとは限らないため、現地大使館に照会を依頼するなど、経験のあるスタッフを雇用するために当該国におけるコネクションを最大限利用することが肝心と考える。
以上

現地の写真

ジャパン・プラットフォーム(JPF)が9/13-9/20に行った初動調査の際に 撮影した画像です。

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