国際協力NGOジャパン・プラットフォーム(JPF)

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プレスリリース 2022年09月22日

アフガニスタン人道危機支援のさらなる充実を目指し パキスタン国内におけるアフガニスタン避難民に関する状況調査報告書を発行

アフガニスタン人道危機支援のさらなる充実を目指し パキスタン国内におけるアフガニスタン避難民に関する状況調査報告書を発行(PDFファイル 593KB)

緊急人道支援団体のジャパン・プラットフォーム(東京都千代田区/以下、JPF)は、パキスタン国内におけるアフガニスタン避難民に関する状況調査を実施し(調査期間:2022年4月~7月)、このほど調査結果をまとめた報告書を発行しましたのでお知らせします。

2021年8月のアフガニスタンにおける政変は、従来の自然災害、新型コロナウイルスの蔓延、長引く紛争などで疲弊したアフガニスタンの人道危機をさらに深刻化・長期化させており、多くの人が隣国のパキスタンに避難しています。JPFはこうした状況を踏まえ、JPF加盟NGOによる今後の支援活動のさらなる充実に資するべく、パキスタン国内において状況調査を実施し、報告書を取りまとめました。

本調査の概要や調査結果の主なポイントは以下の通りです。

調査の概要

  • パキスタンに流入する新規アフガニスタン人の全体的な傾向やニーズを把握するため、現地の調査専門会社に委託し、すべての主要関係者に対するインタビューや、現状およびパキスタン政府による各種規制等に関する体系的かつ詳細なデスクレビューを実施。これらの流動的な質的情報をもとに分析を行った。
  • 1970年代からパキスタンに流入し滞在し続けたアフガニスタン人が最も多く居住するパキスタンのハイバル・パフトゥンハー(KP)州およびパンジャブ州と、特に新規流入が多いイスラマバードで、教育、健康、生計、保護のセクターにおける新旧流入アフガニスタン人の脆弱性を調査するとともに、各セクターにおける今後の支援の方向性について考察している。
  • マクロレベルのデータのみならず、新旧流入アフガニスタン人に対するインタビューにより、ミクロレベルでの最新かつ詳細な情報が含まれており、「パキスタンにおけるアフガニスタン人の今」を把握するための非常に貴重な情報となっている。

調査結果の主なポイント

  • アフガニスタン人の流入が始まった1979年以降、パキスタンの国中に「難民キャンプ」が設置され「難民村」へ移行したが、現在パキスタン国内にいるとされるアフガニスタン人140万人の内、「難民村」に居住しているアフガニスタン人は全体のわずか19.7%。多くはKP州、バロチスタン州、パンジャブ州や首都イスラマバードなど主流パキスタン社会での生活を確立しており、この変化がパキスタン政府の政策の方向性の変化にもつながっている。
    https://data.unhcr.org/en/country/pak
  • 2021年8月のアフガニスタンにおける政変により、大量のアフガニスタン人避難民がパキスタンへ流入すると当初予想されたが、パキスタン政府は新規流入アフガニスタン人を国際条約に拠りさまざまな保護を与えられるべき「難民」ではなく「一次的な避難者」とし、パキスタン国内での権利や享受できるサービスを著しく制限したため、その数は予想より少なくなった。アガニスタン人の公式な入国ルートは、主にKP州のトルカム国境、バロチスタン州のチャマン国境、イスラマバード空港とされているが、国境地帯は山岳地帯であり非公式なルートが261も存在しており、2021年8月のアフガニスタンにおける政変前後から始まった正確な新規流入者数は誰も把握できていない。
  • パキスタンに居住するアフガニスタン人は、大きく以下の3つの属性に分類される。
    1. 政府の市民登録制度に登録されている個人
    2. 人道支援機関が管理する市民登録システムに登録されている個人
    3. いずれにも登録されていない個人および新規流入人口
    政府か人道支援機関に登録されていれば、一定程度の教育、医療サービス、住宅支援を利用できるが、いずれも非公式にしか就業できず、法的扶助や財産・土地の権利は制限されている。非登録の個人や新規流入したアフガニスタン人は一部の医療や教育へアクセスする権利はあるが、移動は制限されており経済活動に従事できない。
  • 新規流入したアフガニスタン人の問題の程度や深刻さは、年齢、性別、民族、経済階級、支援ネットワークなどによって大きく異なるが、直接のインタビューから、滞在資格の失効によりいずれ違法滞在となることへの懸念、複数の新規流入家族で狭い住居に滞在していること、インフレによる経済状況の悪化と失業率の高さから非正規雇用の機会すら見つけることの困難さ、強制送還の恐れや言葉の壁から医療や教育にアクセスできていないことが浮かび上がった。
  • 一般的な傾向として、滞在期間が長くなるほど社会的善意を受けられなくなる傾向がある。アフガニスタンからの流入が始まってから40年近くが経っていることに加え、これまで国中に居住していた人々が近年は主要都市にも集中し始めたこともあり、パキスタン人とアフガニスタン人の社会的緊張は政治的緊張へと変化し始めている。すでにパキスタン社会に生活を築いたアフガニスタン人コミュニティが、新規流入したアフガニスタン人を支え、「難民が難民をホスト」するという現象が見られる。
  • 上記のほか、各セクター(教育、健康、生計、保護)おける、アフガニスタン人の脆弱性の評価や今後の支援の方向性に関する考察などをまとめている。

本調査報告書の全文(英語のみ)は、下記JPFホームページで閲覧可能です(「調査報告書」タブをご覧ください)
https://www.japanplatform.org/programs/afghanistan2018/

また、JPFは今回の調査のほかに、食料危機が深刻化するアフガニスタン国内における食料支援の調査や、ガザ地区における慢性的な電力危機が子どもたちの生活に与える影響に関する調査等も実施していますので、調査結果の公表準備が出来次第、随時お知らせしていきます。

なお、パキスタンで、今年6月以降の度重なる洪水により史上最悪レベルの水害が発生していることを受け、JPFは9月15日「パキスタン水害被災者支援2022」プログラムを立ち上げ、被害に遭われた方々への支援活動を開始しました。今回の調査は大規模水害発生直前に実施されましたが、対象地域は被災地域と重複しており、調査で明らかとなったアフガニスタンからの避難民の脆弱性は増大し、困難な状況はさらに深刻化することが容易に推測できます。JPFは今後も、パキスタンおよびアフガニスタンの人々に寄り添った支援を継続するとともに、今回のような調査やモニタリング・評価等を通じて、加盟NGOとともに支援の質とアカウンタビリティの改善に努めてまいります。

特定非営利活動法人(認定NPO法人)ジャパン・プラットフォームについて

コソボ紛争の経験を教訓に、NGO、経済界、政府の対等なパートナーシップのもと、2000年に発足した日本の緊急人道支援のしくみ。平時より、3者および多様な人々が、強みや資源を生かして連携できるプラットフォームとして機能し、国内外の自然災害による被災者、 紛争による難民・国内避難民に、迅速かつ効果的に支援を届けています。これまでに60以上の国・地域において、総額760億円以上、1900事業以上の人道支援活動を展開。各得意分野を持つ40以上の加盟NGOを様々な形でサポートしながら、緊急人道支援のプロフェッショナルとして、支援を必要とする人々のニーズに根ざしたプログラムを実施しています。

また、JPFは2000年の設立直後から、20年以上にわたってアフガニスタン支援を続けています。JPFのアフガニスタン支援の詳細は、以下のページをご参照ください。

JPFのアフガニスタン支援(寄付受付中)
https://www.japanplatform.org/programs/afghanistan2018/

JPFの活動を継続的に支えてくださるマンスリーサポーターも募集しています
https://www.japanplatform.org/support/monthly_supporter.html

本件に関するお問い合わせ先

特定非営利活動法人 ジャパン・プラットフォーム
渉外広報部 宮永、事業評価部 松本

TEL:03-6261-4035 E-mail:info@japanplatform.org

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