NGO能力強化研修プログラム

2016年2月29日~3月4日、「INEE教育ミニマム・スタンダード・トレーナー養成研修」を米国・ワシントンD.C.にて開催

イベントレポート

Session10: Resource Mobilization

「お金は大事!-教育支援資金の獲得プロセスについて」

お金は大事!-教育支援資金の獲得プロセスについて

研修3日目のResource Mobilization(資源動員)のセッションでは、USAID(米国国際開発庁)から講師を招き、資源には資金、物資、人員の3つがあるという基本を確認した後、緊急事態における教育支援を行う際の、ファンドを得られるプロセスや、教育クラスター(参照:Day3, Session6)の役割を学んだ。

これまでのセッションで、「人道プログラム・サイクル(Humanitarian Programme Cycle)」(下図参照)が人道危機に対して共通して効果的かつ重要なプロセスであることを学んだが、Resource Mobilizationはこのサイクルの一環であるため、ニーズの提示、資金獲得においても調整・統一されたプロセスが必要である。3つの資源のうちの一つ、資金に関するものには主に以下の種類がある。

お金は大事!-教育支援資金の獲得プロセスについて

「Humanitarian Programme Cycle」、Humanitarian RESPONSE、
https://www.humanitarianresponse.info/en/programme-cycle/space、2016/7/4引用

Humanitarian Response Plan (HRP: 人道対応計画)

これはある国で紛争や自然災害等の緊急事態が発生した後、国連人道問題事務所(以下、UNOCHA)の調整の下、国際社会に向けて援助を求める人道アピールで、支援は国連機関、国際・現地NGO、現地政府を通じて行われる。教育分野は緊急人道支援としてのニーズがあればプランの一部となり、前セッション(参照:Day3, Session9)で学んだ「教育クラスター」が、教育分野で必要とされる支援内容、必要額(概算)を提示し、UNOCHAと調整する。最初のアピール(initial appeal)は緊急事態発生後5日以内に出されるため、ニーズや支援額は大まかなものであるが、追って詳細なニーズを調査・分析後、アップデートすることができる。

Central Emergency Response Fund (CERF: 国連中央緊急対応基金)

これは2006年に設立された、UNOCHAから国連機関にのみ供出される緊急人道支援のファンドであるが、NGOは国連機関の実施パートナーとして資金を受け取ることができる場合がある。全体の資金規模は年間約4億ドルであるが、このファンドは”Life-saving”(人命を救う)活動が優先に支援されるため、教育分野への資金配分は2%に過ぎない。
http://unocha.org/cerf/

Flash Appeal(緊急アピール)

緊急事態発生後1-2週間以内に供出される、3~6ヶ月までの緊急および復旧時期に必要な人道支援のアピールで、分野別に出される場合もある。アピールプロセスはUNOCHAによって管理されている。

Consolidated Appeal Process (CAP: 国連統一人道アピール・プロセス)

これは人道危機に際して国際社会に対し迅速な資金提供を要請するために導入されたメカニズムである。このプロセスは、人道危機が発生している国・地域に対して、より効果的・効率的な支援を目指し、被災国政府等との協議・調整を通じた支援ニーズの特定や、人道支援機関間の援助の重複・不足の解消が目的とされている。本アピールは、6ヶ月以上続く人道危機に対し、1年に1度出される。
http://www.unocha.org/cap/

お金は大事!-教育支援資金の獲得プロセスについて

上記のような人道支援資金を動員するメカニズム/プロセスにおいて、教育ニーズを提示し、タイムリーに資金を得て効果的な教育支援を行うには、教育クラスターの役割は重要であるが、アフガニスタンのように教育クラスターの機能が現段階では必要とされないと判断された場合、教育分野はアピールに含まれなくなってしまう場合がある。

また、人道支援資金の使途の透明性を確保することは非常に重要なことから、使途詳細はトラッキング・システムである“Financial Tracking Service”(https://fts.unocha.org)で随時確認できるようになっている。教育クラスターを調整する立場のコーディネーターは、資金の使途を把握しておく必要が、クラスターを構成するメンバー団体は情報をアップデートする必要があるため、このシステムが活用される。
ちなみにドナーから直接、実施団体に資金が供与される場合は、教育クラスター・コーディネーターが資金の使途を追う責任はない。

講師が以前はドナー側の立場ではなく、ドナーにファンド提供を依頼する立場であった経験から、ドナーに対するアピールの鍵として、「ニーズの数値と必要金額を提示することが重要である」とのコメントがあった。

小荒井 理恵
教育協力NGOネットワーク(JNNE)

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イベント概要

ジャパン・プラットフォーム(JPF)は、「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」(※)の一環として、「INEE教育ミニマム・スタンダード・トレーナー養成研修」を、来年2月29日~3月4日の日程で米国・ワシントンD.C.にて開催します(共催:米国NGO団体Mercy Corps)。

これは、昨今の世界情勢や緊急人道支援の性質と傾向、また以前よりJPF加盟NGOから寄せられていたトレーニング開催への高い要望を鑑み、JPFが教育分野における国際的なミニマム・スタンダード(INEE)についての学習機会の提供を模索してきた結果によるものです。
本研修参加者は研修終了後、トレーナーとして年度内に日本にて約2日間の研修を実施していただくことになります。よって、緊急教育支援に従事した経験を持ち、かつ日本での普及活動に意欲的な方を対象に開催すべく、研修内容や参加者の応募資格、条件等については鋭意調整中です。詳細決定次第、随時ご案内いたしますが、ご関心のある方は直接下記窓口までお問い合わせください。

INEE教育ミニマム・スタンダードとは:
緊急教育支援の情報ネットワーク(Inter-Agency Network for Education in Emergency : INEE)が策定した緊急時の教育におけるミニマム・スタンダードです。INEEの運営には、UNHCE、UNICEF、UNESCO、USAID、World Vision Internationalなどが入っており、国際的に認知されている基準です。本スタンダードは、ハリケーン・台風・地震・洪水などの「自然災害」と紛争や内戦によって引き起こされた「複合的な緊急情勢」に緊急的に対応するために設計されており、現在170ヶ国で使用されています。

参考:

INEE
http://www.ineesite.org/en/

INEEミニマムスタンダード
http://toolkit.ineesite.org/toolkit/INEEcms/uploads/1012/INEE%20MS%20Japanese_2010.pdf

内閣府HP:緊急時の教育のための最低基準とは
http://www.pko.go.jp/pko_j/organization/researcher/atpkonow/article033.html

※「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」について:
「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」とは、米日カウンシル(US-Japan Council)主導のTOMODACHI イニシアチブ、ならびにJ.P.モルガンの支援を受け、JPFが米国のNGO団体マーシー・コー(Mercy Corps)とのパートナーシップのもとに実施している研修事業です。東日本大震災におけるNGOの支援活動から得られた貴重な経験や教訓を活かし、日本のNPO/NGOが国内外でより効果的な人道支援活動を行うための能力強化を目的としており、2013年4月~2016年3月までの3年間で、人道支援に関するさまざまな研修を計画、実施しています。

研修概要

期間
2016年2月29日(月)~3月4日(金)
※この日程には、出発・帰国日は含まれていませんのでご注意ください。
渡航先
米国・ワシントンD.C.
費用
無料
※米国往復航空運賃(上限あり)、ESTA(渡航認証)申請費用、研修期間の保険料、米国国内宿泊費、日当(注)はJPFが負担します。
注)日当はMercy Corpsの規定額に基づき、米国ドルで支給されます。
定員
日本人10~15名 (外国からの参加者複数名)
※厳正な審査の上、参加者を決定します。
言語
英語

本件に関するジャパン・プラットフォーム(JPF)についてのお問い合わせ先

特定非営利活動法人(認定NPO法人)ジャパン・プラットフォーム

NGO能力強化研修プログラム担当:鈴木、谷口
E-mail:training@japanplatform.org
〒102-0083 東京都千代田区麹町3-6-5 麹町GN安田ビル 4F
TEL:03-6261-4751(事業部直通) 代表:03-6261-4750 FAX:03-6261-4753