今何が起きているの?
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食料配付の様子「ガザ人道危機対応支援」 ©CCP
毎年10月16日は「世界食料デー」です。
この日は、世界の食料問題を考える日として、FAO(国連食糧農業機関)の設立を記念して制定された国際デーで、世界の飢餓や食料安全保障について考える機会として、世界各地でさまざまな取り組みが行われています。
FAO、国際農業開発基金(IFAD)、国連児童基金(UNICEF)、国連世界食糧計画(WFP)、世界保健機関(WHO)が、共同で毎年「世界の食料安全保障と栄養の現状」(The State of Food Security and Nutrition in the World: SOFI)」という報告書を発行しています。
SOFIによると、2025年には約6億4,500万人(世界人口の約7.8%)が飢餓に直面し、約21億人(世界人口の約25.8%)が中程度または深刻な食料不安を経験していると推計されています。また、約27億人(世界人口の約32.7%)が経済的な理由で健康的な食事を摂ることができない状況にあります。※1
このような状況から、2030年までの達成を目指すSDGs(持続可能な開発目標)の目標2「飢餓をゼロに」の実現は、依然として大きな課題となっています。
世界食料デーを機に、世界で起きている食料危機の現状とその背景について考えてみましょう。
食料危機は、必ずしも食料の生産量不足だけで起こるわけではありません。
例え食料が十分にあったとしても、人々のもとに届かなかったり、価格の高騰によって購入できなかったりすることで、食事をとれない状況が生まれることもあります。
SOFIでは、食料安全保障を脅かす要因として、紛争や気候変動、経済的要因などを挙げています。こうした要因はそれぞれが単独で影響を及ぼすだけでなく、複雑に絡み合いながら食料危機を深刻化させていると指摘されています。
紛争が発生すると、人々は住み慣れた土地を離れて避難を余儀なくされることがあります。また、農地や生産施設が被害を受けたり、道路や市場などの流通網が機能しなくなったりすることで、食料の生産や供給にも大きな影響が及びます。
その結果、人々が必要な食料を確保することが難しくなり、食料不安や栄養不良の要因となることが多くあります。
近年は、干ばつや洪水、豪雨などの異常気象が世界各地で頻発しています。
こうした気候変動の影響は、農業生産に直接的な被害を与えるだけでなく、収穫量の減少や価格上昇を通じて、人々が必要な食料を確保することにも影響を及ぼします。
特に農業への依存度が高い地域では、その影響が暮らしや生計にも大きく及ぶことがあります。
経済の停滞や物価上昇も、食料危機を引き起こす要因の一つです。
食料が市場にあったとしても、収入の減少や価格高騰によって購入できなければ、十分な食事を確保することはできません。
特にぜい弱な立場に置かれた人々ほど、その影響を受けやすいとされています。
実際の人道危機の現場では、一つの要因だけで食料問題が発生しているわけではありません。
例えば、紛争によって避難を余儀なくされた地域が、同時に干ばつや洪水などの気候変動の影響を受けることもあります。また、経済危機による物価高騰が、人々の食料確保をさらに難しくする場合もあります。
このように、食料危機は複数の要因が重なり合うことで複雑化し、長期化することがあります。その影響の現れ方は地域によって異なり、人々が抱える課題もさまざまです。だからこそ、それぞれの地域や状況に応じた支援が求められているのです。
ここからは、JPFが支援を行った事例を通じて、現場で起きている食料危機の状況を見ていきましょう。
ガザ地区では、長期化する紛争や物資搬入の制限により、深刻な食料危機が続いています。2025年8月には、国連が中東地域で初めて「飢きん」の発生を確認しました※2。
飢きんとは、国際的な指標である「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)※3」における最も深刻な段階であり、人々が極度の食料不足に直面し、命の危険にさらされる状態を指します。
ガザでは、日々の食事を人道支援に頼らざるを得ない状況が続いています。
こうした状況を受け、JPFは「ガザ飢きん緊急支援」を実施し、現地パートナー団体と連携して、炊き出しによる温かい食事の提供や給水、食料・生活必需品の配布などを行いました。
米や野菜などの食料を受け取った母親たち/ガザ地区/2025年9月 🄫REALs
詳細:ガザ飢きん緊急支援
スーダンでは武力衝突の激化により、多くの人々が避難を余儀なくされています。2025年には北ダルフール州の州都エル・ファーシル周辺で戦闘が激化し、わずか10日間で約8万9,000人が避難しました※4。その後も戦闘は周辺地域へ拡大し、新たな避難民が発生しています。
北ダルフール州や北コルドファン州の一部地域は、IPCにおいて最も深刻なフェーズ5(飢きん)※3と判定されるなど、極めて厳しい状況に置かれています。
こうした中、JPFは食料支援に加え、調理器具や毛布、衛生用品などの生活必需品を配布するとともに、給水支援やトイレの設置・修復を実施しています。食料・水・衛生を組み合わせた支援を通じて、避難直後の人々の命と生活を支えています。
北ダルフールのエル・ファーシルにて食料配布の様子/北ダルフール州エル・ファーシル/2026.02.25 ©Good Neighbors Japan
2025年、南アジア・東南アジアではサイクロンやモンスーンによる豪雨災害が相次ぎ、スリランカやインドネシアでは94万人以上が避難を余儀なくされました※5。特に山岳部や農村部では、土砂災害や洪水によって道路や橋などのインフラが被害を受け、支援が届きにくい状況が発生しました。
また、農地や漁業施設の被害は、人々の暮らしだけでなく、生計手段や食料の確保にも大きな影響を及ぼしました。被災地域では安全な水の確保も大きな課題となっています。
JPFはこうした課題に対応するため、食料や衛生用品、寝具などの生活必需品を配布するとともに、井戸や浄水器の設置を通じて安全な水の確保を支援しました。また、障がい者や高齢者など、特に支援を必要とする人々を優先しながら、生活再建や生計回復に向けた支援を行っています。
米や野菜などの食料を受け取った母親たち/ガザ地区/2025年9月 🄫REALs
詳細:アジア広域水害対応支援
今回紹介したように、ガザやスーダン、アジアの水害被災地で見られる食料危機は、決して遠い国だけの問題ではありません。
例えば、中東危機をはじめとする国際情勢の不安定化は、エネルギー価格や物流コストの上昇を通じて世界経済に影響を与え、私たちの暮らしにも物価高という形で影響を及ぼしています。
中でも気候変動は、世界各地で干ばつや洪水、豪雨などの異常気象を引き起こし、農業や食料生産に大きな影響を与えています。近年、日本でも記録的な猛暑や大雨による農作物への被害が報告されており、気候変動が農業に与える影響への関心が高まっています。
私たちの食卓に並ぶ食料の多くは、国内だけでなく世界各地の生産や流通ともつながっています。例えば、日本の食料自給率は、カロリーベースで37%※6と、先進国の中でも非常に低いのが現状です。世界の食料問題は、私たちの暮らしと切っても切れない関係にあります。
世界食料デーは、世界の食料問題について理解を深める機会でもあります。
この機会に、世界各地で起きている食料危機の現状や、その背景にある課題に目を向けてみてはいかがでしょうか。
出典
※1 FAO, The State of Food Security and Nutrition in the World 2026, 24 July 2026
※2 世界食糧計画(WFP), ガザで初めて飢きんを確認(2025年8月22日)
※3 IPC Global Partners, Integrated Food Security Phase Classification (IPC)
総合的食料安全保障レベル分類(IPC:Integrated Food Security Phase Classification)は、食料不安や栄養危機の深刻度を国際的な基準で分類する指標です。最も深刻な「フェーズ5」が「飢きん(Famine)」にあたります。
※4 UN News, Sudan: 89,000 civilians have fled El Fasher,(10 November 2025)
※5 OCHA, Asia and the Pacific: Southeast and South Asia Cyclones and Floods Humanitarian Snapshot, 2025年12月3日
※6 農林水産省, 日本の食料自給率 (令和7年度食料自給率について)