災害に備えるには
公開日
最終更新日
地震が発生する、気象庁から津波注意報や津波警報の発表があり、メディアやアプリなどで表示されることがあります。
地震や海底火山噴火などが発生すると、気象庁が、津波警報・津波注意報・大津波警報を発表し、私たちもメディアやアプリなどにより速報を知ることができます。
2026年7月に発生した熊本県を震源とする地震の際も、一部地域に津波予報が発表されたことは、記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。津波予報で示される高さは数十センチから数メートルまでさまざまですが、「30cm程度なら大丈夫そう」「1mなら自分の身長より低いから危険ではないのでは」と感じたことがある方もいるかもしれません。
しかし、その認識は実際の津波の危険性とは大きく異なります。
津波は、一般的な波とは性質が大きく異なり、“高さが低い=安全”とは言えず、見た目の高さがそれほど高くなくても、非常に大きなエネルギーを持っています。
津波から命を守るためには、その数字が持つ意味を正しく理解することが重要です。
では、30cmの津波にはどのような危険があるのでしょうか。
気象庁によると、津波は海底から海面までの海水全体が動く現象であり、私たちが海岸で目にする一般的な波とは大きく性質が異なります※1。
通常の波は主に海面付近の水が動いていますが、津波は大量の海水が一気に押し寄せるため、見た目の高さ以上に大きな力を持っています。
「30cm」と聞くと大人の膝下ほどの高さをイメージするかもしれません。しかし津波の危険性は高さだけでは測れません。たとえ低い津波であっても、人の体勢を崩し、命に関わる事故につながる可能性があるのです※2。
津波でもう一つ知っておきたいのが、「何度も繰り返し押し寄せる」という特徴です。
気象庁は、「津波は繰り返し襲ってくる」と注意を呼びかけています。広い範囲の沿岸に津波が到達した場合には、津波が半日から1日以上続くこともあります※2。
また、第1波が最も大きいとは限りません。後から到達する波のほうが高くなることもあり、一度波が来たからといって安全になったとは言えません。
そのため、津波注意報や津波警報が発表された際は、「小さい津波だから大丈夫」「もう波は来ないだろう」と自己判断せず、解除されるまで安全な場所にとどまることが大切です。
津波予報や津波警報では、「30cm」「1m」「3m」など予想の高さが発表されます。
しかし、その数字だけでは実際にどのような危険があるのかイメージしにくいかもしれません。
30cmは大人の膝下ほどの高さです。
一見すると大きな危険はなさそうに思えますが、津波は海底から海面までの海水全体が動くため、強い力を持っています。
気象庁は、0.2~0.3m程度の津波でも人が流されるおそれがあるとしており、「30cmだから安全」とは言えません※1。
1mは小学校低学年の子どもの身長に近い高さです。
津波が1mになると、人が流される危険性はさらに高まります。海の中にいる人はもちろん、海岸付近にいる人も大きな危険にさらされます。
また、小型船舶が転覆するおそれもあり、人的被害だけでなく海上での被害も発生する規模です※3。
3mは一般的な住宅の1階部分に相当する高さです。
気象庁では、木造家屋が全壊・流失し始める規模の目安としています。また、多くの人が避難できなくなるおそれがあり、自動車も流される危険があります※3。
5mを超える津波では、多くの木造家屋が全壊・流失するとされ、被害はさらに深刻になります。
建物や道路、ライフラインにも大きな被害が及び、広範囲にわたる災害につながるおそれがあります※3。
津波の高さ別で見る被害の目安
気象庁公表資料(※1、2、3)をもとに作成。表の構成にあたり、防災支援ラボの記事を参考にしています。
ここまで高さごとの被害の目安を見てきました。しかし、実際の津波災害ではどのような規模の津波が発生したのでしょうか。
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、巨大地震に伴って大規模な津波が発生し、東北地方を中心に甚大な被害をもたらしました。内閣府によると、岩手県宮古市重茂姉吉地区では国内観測史上最大となる40.5mの遡上高(陸地の斜面を駆け上がった津波の高さ)が記録されています※4。
各地を襲った津波の高さは、福島県相馬では9.3m 以上、岩手県宮古で8.5m 以上、大船渡で8.0m以上、宮城県石巻市鮎川で7.6m以上などが観測(気象庁検潮所)されたほか、宮城県女川漁港で14.8mの津波痕跡も確認(港湾空港技術研究所)されています※4。
40.5mという高さは、およそ13階建てビルに相当します。この津波は住宅や車両、港湾施設などに甚大な被害をもたらし、多くの命が失われました。
一方で、適切な避難によって命が守られた事例もあります。
岩手県釜石市では、釜石東中学校と鵜住居小学校の生徒約570人が地震発生後に迅速に避難し、津波から逃れ、助かることができました※5。
中学校の生徒たちは揺れが収まるとすぐに避難を開始しました。小学校の生徒たちは、日頃一緒に避難訓練をしていた中学生たちが一斉に避難する様子を見て、それに続きました。
当初の避難場所に到着した後も、「ここで安全だ」と決めつけることなく、さらに高い場所へ避難を続けました。その後、最初の避難場所付近まで津波が押し寄せましたが、避難を続けていたことで多くの命が守られました
日頃から行われていた防災教育や、児童・生徒たちが自ら判断して避難した行動が命を守った事例、「釜石の軌跡」として広く知られています。
何よりも大切なのは、「津波警報や注意報が発表されたら、すぐにより高いところに避難すること」がなのです。
津波の「30cm」「1m」「3m」といった数字は、危険の大きさを示す目安ではあっても、安全を示す数字ではありません。
津波注意報や津波警報が発表された際は、「この高さなら大丈夫だろう」と判断せず、速やかに安全な場所へ避難することが大切です。
また、一度避難した後も自己判断で戻らず、警報や注意報が解除されるまで安全な場所にとどまりましょう※2。
日頃から避難場所や避難経路を確認し、いざという時に迷わず行動できるよう備えておくことが、命を守ることにつながります。
避難場所や地域の災害リスクは、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」で確認できます。
未来の自分や大切な人を守るために、この機会に自宅や職場、学校周辺の情報を確認しておきましょう※6。
出典
※1 気象庁「津波について」
※2 気象庁「津波から身を守るために」
※3 気象庁「津波警報・注意報、津波情報、津波予報について」(津波の高さごとの被害想定、津波警報・注意報の区分)
※4 内閣府「特集 東日本大震災」
※5 内閣府「特集 東日本大震災から学ぶ 〜いかに生き延びたか〜」
※6 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」