国際協力 NGO ジャパン・プラットフォーム( JPF )| Japan Platform

紛争や災害時の緊急・人道支援を行うNGO組織 ジャパン・プラットフォーム

公開シンポジウム「南スーダンの展望」

【開催報告】 公開シンポジウム「南スーダンの展望」

2014年1月11日(土)に開催した「南スーダンの展望」シンポジウムはおかげさまで盛況のうち終了いたしました。
当日は100名を超える方に参加いただき、熱心に皆さん耳を傾けていらっしゃいました。
ご参加頂いた皆さま、関係者の皆さまに心より御礼申し上げます。

日時
2014年1月11日(土) 13:30~16:30
場所
キャンパス・イノベーションセンター東京 1F国際会議室
共催
日本アフリカ学会、大阪大学グローバルコラボレーションセンター

開催要旨

本シンポジウムは、南スーダン共和国の独立から2年半が経過するこの時期に、同国の支援に携わるNGO及び研究者より南スーダンの現状と課題を紹介し、今後の南スーダンへどのように関与していくのか、長期にわたる紛争地域での支援でのあり方を討議することを目的に開催されました。加えて、12月の緊急事態を踏まえて、今後を考える機会となりました。

シンポジウムには、支援関係者や研究者の他、メディア、民間企業、学生を中心に100名以上が参加し、栗本英世大阪大学人間科学科教授の基調講演、NGOからの報告並びに各界の識者によるパネルディスカッションに耳を傾け、南スーダンの展望に関わる国際社会の役割について活発に討議されました。

概要

本シンポジウムでは、ジャパン・プラットフォーム事務局(以下、JPF)の司会の下、椎名規之JPF事務局長による開会挨拶につづき、栗本英世大阪大学人間科学科教授が基調講演を行い、早すぎる国家崩壊の危機の原因となった2005年から今日に至る南スーダンにおける国家建設の方法及び国民建設の失敗について、エピソードを交えて紹介しました。

パネルディスカッション

1.基調講演

「住民投票後3年の状況分析と今後の展望」
 栗本 英世 大阪大学人間科学研究科 教授

基調講演栗本教授はまず、南スーダンのサルヴァ・キール大統領は、「民主的な指導者にもなれず、また独裁者になるのも失敗した」と、そして敵を抹殺する最悪の選択肢を選び、ゆえに、南スーダンは残念ながら内部武力紛争に陥ったと同大統領の政治家としての失敗について指摘しました。続けて、2006年から復興の過程で、戦争と紛争で破壊されたコミュニティの生活に平和をもたらす計画が欠如していたことに触れ、強制的な武装解除が失敗し、伝統的な権威(部族長等)の平和調停が採用されなかったことを挙げました。

特に、政治システムについては、独立前は、北部はイスラム圏で抑圧的で「古いスーダン」と呼ばれ、内戦の継続が権力を維持する手段となり、敵を排除するシステムであり、南部は市民が平等で「新しいスーダン」だと言われるほど異なるものでした。しかし、2011年の独立後の南スーダンはその「古いスーダン」のシステムを踏襲することで、北スーダンと同じシステムとなってしまいました。独立前のキール大統領は、敵に寛容であり、それゆえ2005年以来南スーダンは概ね平和でしたが、2013年12月以降はその方針を180度転換してしまいました。大統領は自らの民兵を組織し、(副大統領の出身部族)ヌエル族を迫害するというエスニックカードを切ることで、政治家としての最後の一線を越えてしまい、もう修復不可能なところまできてしまったのだと説明しました。最後に、多額の資金と人が投入されたのになぜ平和が定着しなかったのか、問題定義がなされました。国連や国際社会の責任にも触れつつ、コミュニティ・社会を相手にした南スーダンの再建を進めるよう提案し基調講演を締めくくりました。

栗本 英世栗本 英世 大阪大学人間科学研究科 教授
専門は、社会人類学、アフリカ民族誌学、紛争研究など。1978年以来、南スーダンに関する調査研究を継続している。
2010年4月のスーダン総選挙及び住民投票で日本政府監視団員として参加。
主な著書に『民族紛争を生きる人びと:現代アフリカの国家とマイノリティ』(1996年)、
『未開の戦争、現代の戦争』(1999年)など。

2.NGOからの報告~南スーダンでの日本の市民社会の取り組み

① 「南スーダンにおけるJPFの取り組み」
  板倉純子 ジャパン・プラットフォーム(JPF)海外事業部南スーダン担当

ジャパン・プラットフォーム(JPF) 板倉純子板倉純子海外事業部南スーダン担当は、2006年4月にJPF/NGO合同調査を経てプログラムが開始され、南スーダンの4州でNGOの強みを生かし、支援活動を展開されていることを紹介しました。これまで36億円に上る支援を実施し過去3年だけで、延べ60万人以上にサービスを提供したことを報告しました。昨年12月の内部武力紛争による治安情勢が不安定であり、現時点ではプログラム再開の目途は立っていないが、一日も早く人々の生活が改善されるよう願っており、支援再開の必要性を伝えました。

② 「アッパーナイル州からの報告」
  中村 夕貴 特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ) 支援事業部緊急人道支援課
  國吉 美沙 特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ) プロジェクト・コーディネーター

ワールドビジョン・ジャパン(WVJ) 中村夕貴中村夕貴支援事業部緊急人道支援課及び國吉美紗ロジェクト・コーディネーターは、スーダン共和国と国境を接するアッパーナイル州における支援活動を紹介し、教育と水・衛生分野での成果を報告しました。国境が閉鎖されたことにより極端な物価の高騰をまねき、治安も不安定になった過去の経緯や、2011年の独立により、スーダンからの避難民12万人の流入があったと写真を用いて紹介しました。これまで子どもに焦点をあてた支援を実施しており、学校に行くことができなかった子どもたちが、よろこんで学校に行くようになったと変化を報告し、長期的な視点での支援の必要性を訴えました。

③ 「ジョングレイ州からの報告」
  長村 裕 特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ) 南スーダンフィールドコーディネーター

ピースウィンズ・ジャパン(PWJ) 長村裕南長村裕南スーダンフィールドコーディネーターからは、(大統領の出身部族)ディンカ族と(副大統領の出身部族)ヌエル族が共存するジョングレイ州における活動の報告がされました。これまで、帰還民のために井戸の設置や修理を通じて安全な水の提供をし、紛争の要因である経済的欲求に応えてきたことを報告しました。また、長村氏は滞在先であった州都ボーの12月15日以降の状況を紹介し、自身も国際連合南スーダン派遣団(UNMISS)基地に避難したことや、大勢の市民が同基地に救助を求め押し寄せてきた時の写真を公開しました。最後に、現地スタッフからの情報としてPWJボー事務所が壊されたようだと伝え、ジョングレイ州での事業再開の目途は立っていないが、緊急支援を今後展開する想定をしていると報告しました。

3.パネルディスカッションならびに質疑応答

  • テーマ:
     1 )武力衝突/クーデター発生とその後の現状
     2 )紛争地での国造り
     3 )今後の南スーダンへの関わり方
     4 )Q&A
  • モデレーター:二村 伸 NHK解説委員
  • パネリスト:
     - 齋藤 大作(特定非営利活動法人 ピースウィンズ・ジャパン南スーダン現地代表)
     - 花谷 厚(独立行政法人 国際協力機構(JICA)南スーダン事務所長)
     - 遠藤 貢(東京大学 大学院総合文化研究科教授)
     - モハメド オマル アブディン(東京外国語大学博士後期課程)

パネルディスカッションNHK二村伸解説委員をモデレーターに迎え、①現在の紛争がどういう状況であるか、②紛争地域での国づくりについて、③今後、国際社会は南スーダンにどのように関わっていくべきかの3つの論点で、実務者及び研究者により議論が展開されました。

冒頭、今般の武力衝突により急激な治安悪化を受け退避した齊藤大作PWJ南スーダン現地代表、花谷厚JICA南スーダン事務所長より、現地で何が起こりどう対処したのか報告がありました。
続いて、モハメド オマル アブディン氏(東京外国語大学博士後期課程)は、現在の武力衝突の発端と解決のカギについて洞察し、「南スーダンの武力衝突は、数十人のエリートの利害調整だ」と分析し、「解決策は、和平交渉を通じて権力を分配するしかない」と指摘しました。
遠藤貢 東京大学大学院総合文化研究科教授は、ブルンジ共和国やルワンダ共和国のアフリカにおける国家建設の事例を示し、国づくりの課題は多岐にわたること、民主主義で選挙を実施して選ばれた政権が必ずしも安定しないと国家統合の課題について強調しました。
また、花谷所長は、緊急支援の3つ(①Quickness ②Tangible③Well)の重要性及び、南スーダンにおける構造的なボトルネックの解消の重要性を指摘し、「JICAは石油依存から脱皮をはかるため、農業支援や、交通インフラの整備を実施してきた」と述べました。さらに、齊藤代表は、給水整備を通じて再定住のための支援を継続的に行うことにより経済的な欲求にこたえてきたことを強調し、支援活動でのジェンダー配慮についても言及しました。
今後の国際社会の関与について、遠藤教授はIGADなど仲介勢力の役割の重要性を強調し、アブディン氏は国際社会の責任として「SPLM/SPLAを甘やかしてきた」と指摘し、あるべき姿として、「政府の支援機関は相手国政府の要請ベースで動くだけでなく、国民のために粘り強く交渉していくこと」を提案し、「NGOのジレンマとして、資金源によって活動が制限される現状があるため、日本政府はNGOを育て優遇するべき」と述べました。
パネルディスカッション後、参加者より基調講演及びパネルディスカッションの内容に関する様々なコメントや質問が寄せられ、活発な議論が展開されました。

最後に、モデレーターを務めた二村NHK解説委員より、「南スーダンの安定が地域の安定につながり、国際社会は見捨てない」という強いメッセージで締めくくられました。

シンポジウムの終了にあたり栗本教授は今後の見通しについて触れ、停戦協定が結ばれ、和平合意がなされるとしても平和の定着には、短期的な解決や人道援助だけでなく、中長期的な包括的な社会・政治・文化プログラムが必要であると総括しました。

動画

当日のシンポジウムの内容の一部を、USTREAMでご覧いただくことができます。
※シンポジウムのUSTREAMでの記録は、映画監督として、南スーダンと日本のお年寄りたちを取材したドキュメンタリー映画『アブバとヤーバ』等を制作されている大宮直明氏の協力をいただきました。

#20南スーダンの展望(前半)基調講演部分

#20南スーダンの展望(後半)パネルディスカッション部分